直江津高田
 ● ぼくの細道
 残暑厳しい中、割合そっけなく新潟路を歩いて芭蕉は、陽暦8月20日、直江津(現上越市)に入った。目指したのは聴信寺(写真左)、ここの住職は俳句をたしなんでおり、句会開催の可能性もあったので、芭蕉は、ここに宿泊するつもりで、紹介状も準備していた。
 ところが応対に出た僧に、胡散臭いこじき坊主と見られたのだろうか、葬式を理由にあっさりことわられてしまった。前日の柏崎に続いて2夜連続で冷たいあしらいを受け、芭蕉翁の不機嫌は頂点に達した。他に宿泊のあてもあったので、そちらに足を向けていたところ、聴信寺に芭蕉の高名を知るものがあって、引き止められた。
 ところが芭蕉先生、これに応じては沽券にかかわる、と思ったのか頑として応ぜず、結局他に宿を見つけてしまい、直江津には2泊することになった。その二日とも句会を開いており、聴信寺住職も参加しているので、互いにしこりは残さなかったようだ。
 直江津2泊の後、芭蕉は請われて高田に移り、3泊していずれも句会を開いている。
 そっけなく通過しただけのような越後路だが、さすがプロ、ちゃんと仕事はこなした。


  (写真右は、上杉謙信の墓所のある林泉寺)
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