羽 黒 山
 ● おくのほそ道 本文
 六月三日、羽黒山に登る。図司左吉と云者を尋て、別当代会覚阿闍梨に謁す。南谷の別院に舎して、憐愍の情こまやかにあるじせらる。
 四日、本坊にをゐて俳諧興行。
   有難や雪をかほらす南谷
 五日、権現に詣。当山開闢能除大師は、いづれの代の人と云事を知らず。延喜式に「羽州里山の神社」と有。書写、「黒」の字を「里山」となせるにや。「羽州黒山」を中略して「羽黒山」と云にや。出羽といへるは、「鳥の毛羽を此国の貢に献る」と風土記に侍とやらん。月山、湯殿を合て三山とす。当寺武江東叡に属して、天台止観の月明らかに、円頓融通の法の灯かゝげそひて、僧坊棟をならべ、修験行法を励し、霊山霊地の験効、人貴且恐る。繁栄長にして、めで度御山と謂つべし。
 ● ぼくの細道
 羽黒山、月山、湯殿山と合わせて出羽三山と称するが、三つ並んでいるわけでも高さを競っているわけでもない。いわゆる「三大何とか」というのとは性質が違う。三つの山にはそれぞれ神が宿っていて、扱い分野?が違う。すなわち、羽黒山=現世、月山=死、湯殿山=再生、である。つまり三山がセットになっているのだ。
 その入口である羽黒山、現世との接点であるため標高414メートルとその辺の里山並みに低く、誰でも参拝できるように戒律も緩やかだ。ちなみに月山は標高1984メートルで、真夏でも雪渓が見られるほどの環境で、女人禁制。湯殿山は1504メートルだが神秘のヴェールに包まれている。
 
 とはいえ出羽三山は、厳しい修行で知られる修験道のメッカだ。三神合祭神殿
(写真=上)の軒下には「くわっ」と目をむいた力士たち(写真=右)が悪心を持つ輩の進入に備えている。
 で、あたしは信仰心の持ち合わせはなく、どっちかというと悪心を持つやからに近いので
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