飯坂温泉 |
● おくのほそ道 本文 |
五月朔日の事也。 |
● ぼくの細道 |
![]() せっかく温泉に浸かっていい気分になったのに、あとがよくない。土間にむしろ? 蚤や蚊が出て? 持病まで起こった? そりゃ辛かったろう。飯坂温泉てのはひどいところだ。……と解釈しないほうがよさそうだ。 だいたい芭蕉翁、これまでにも無住の荒れ寺にもぐりこんだり、安宿と思えるところに泊まったり、野宿に近いことをしてきたではないか。なぜことさらにそれを言い立てるのか。 実は、この旅の同行者であり、冷静かつ客観的な旅の記録者でもあった曾良は、この事件については何も記録していない。ということはつまり、そんな事件はなかったか、この旅においては日常的なことで特筆すべきことではなかったといえる。 ![]() さらに、このときより前、藩主より「田地を開作せず、商いもいたさず、むざとこれあるもの、其村に置べからず、宿かすまじき事」という厳しい通達が出たことがある。芭蕉が訪れたときは、その禁令はすでに解かれていたが、庶民の恐怖心はそう簡単には解けない。いまでこそ俳聖芭蕉といっても、当時の人にとってはただのこじき坊主である。雨露がしのげただけでもありがたいと思わねばならなかったかも。 |
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