地球はウルトラマンの星ではない

 なにかと話題をまきながら終了した「ウルトラマン・ガイア」。「ティガ」でそのストーリーテリングが高く評価された小中千昭さんをメインライターに、平成「ウルトラ」の集大成として、とりわけ大きいお友達の注目を集めてスタートしたシリーズであるけれども、通してみたときに感じられるのは、残念ながら後味の悪さではなかったかと思います。

 個人的に小中さんの書く短編ホラー小説(『異形コレクション』にたびたび登場なさってます)は好きです。非常にヴィヴィッドで、シャープなホラーの書ける人だと思うのです。小物の使い方もウマいし、鮮やかとは言いがたいけれどもオチのつけ方も悪くない。「ティガ」の(ワタシはあの最終回は嫌いではありますが)一連の作品でもそれなりにユニークな切り口の作品が多かったと思います。そんな小中さんがメインライターのシリーズなんですから、こりゃ期待するなってほうが無理ってものなんですが、ホラーで見せてくれたオリジナリティがSFではあまり前に出てきてないような感じを持ってしまいました。

 SFっぽいテクニカルタームの多用(リパルサー・リフトだの、アルケミー・スターズとか根源的破滅招来体だのといった概念だの)で固めたシチュエーションは、それまでのウルトラシリーズ以上にディティルへの注力を予感させ、これまでにないハードなSFシリーズとしてのウルトラマンを期待したのですが、残念なことにいろいろいわくありげに語られてたものごとの大部分は、うやむやなままで終わってしまったような気がするんですよね。"お話に対する刺身のツマ"みたいなモノだといってしまえばそれまでなんでしょうけれども、トシのせいかワタシ、拡げたフロシキはすべからく何らかの説明をつけてくれないと、どうもこう、お尻のあたりがムズムズしちゃうんですわ(^^;)

 "根源的破滅招来体"なる存在、それに対抗すべく設立された"GUARD"、"XIG"という組織、人知れず地球の別の次元(でしょ?あれって)で戦う巨人………。思わせぶりなネタフリしてくれた割にそれらがどういうモノだったのか、最終的にどういうことになったのかがほとんど語られなかったような気がします。"根源的破滅招来体というモノ"がやってくる、"XIGという組織"がそれに対抗するものとして"存在している"ってだけだったような気がするんだよなぁ………。

 たとえばこれが"科学特捜隊"とか"ウルトラ警備隊"だと、お話の一番最初に、なんだかわからんけど地球におこるさまざまな怪事件に対抗するための組織ってのがまずあって、彼らがたまたま戦うことが多かったのが"怪獣"であり"宇宙人"だった、ってことでそれなりに話は解るんだけれども、すでに明確な"敵対勢力"の存在が明示されていながら、最後までその正体がなんなのか、目的は何だったのかがはっきりしないまま、"地球を破滅させようとする勢力がある"って前提が出来ちゃって、それに対して"地球は星として、生きとし生ける物すべて(含怪獣)が一丸となって対決する"てえある意味感動的な図式でお話のクライマックスをすり替えちゃう、てえ方法論は、ちょっとズルいでしょう。しかも最終回のタイトルは"地球はウルトラマンの星"。え?そうだったの??(^^;)

 結局一年かけて言いたかったことが、"地球にはウルトラマンがいるから、彼を中心に頑張れば何があっても大丈夫"ってこと?違うでしょそれ。地球を守る"光の巨人"って存在と、人類が意志を集めればそれもまた光になりうるんだ、ってテーマ(ですよね?わたしゃこれはこれで好きじゃないですが)の"ティガ"、一人の若者が、自分の目指すべき到達点として設定した"父"への航路への手段として融合することになった"光の巨人"とアスカの成長を描く"ダイナ"に比べると、あまりにも投げやりな結論のような気が。"破滅招来体"の接近につれて地球怪獣も立ち上がる、って図式はそれなりに新機軸なんですが、なんかこのサブタイトルで全部おじゃんにされちゃったような気分。これが"ウルトラマンの星は地球"だったら全然文句ないんですけど。細かい(苦笑)?

 なんていろいろ書いてきましたけど、実は先日"マトリックス"をSぱらのみんなで観に行った後にビール呑みながら話してた話題のなかで、こんな話が出ました。"昔の役者さんはテンション高かったよなあ"。なんか目からウロコ。そうか、"平成ウルトラ"ってテンション低いんだ、てことですね(^^;)。小手先の理屈をこね回しても、お話がテンション低かったら小賢しい印象しか受けないですよね。なんか"テンション"て言葉が平成ウルトラのいいところ、悪いところを端的に説明しているような気がしました。好きな人には申し訳ないけど、総じて"平成ウルトラ"ってテンション低いと思います。都会的な、なんかどこかでスタッフが"てへっ"みたいな表情になってしまうような、冷静に一歩退いちゃったような、そんな感じがつきまといますね。そこが好きになれないンですよね、オレ(^^;)

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