ロボットの夜

異形コレクション(17)

表紙

井上雅彦 監修
カバーCG 篠原保
カバーデザイン 奥沢潔
光文社文庫
ISBN4-334-73084-1 \838

 "異形コレクション"、17作目のテーマは"ロボット"。個人的にロボットネタで心底怖いな−、と思ったのは、"鉄腕アトム"のなかの"イワンのばか"(というサブタイトルだったかどうか。月に取り残され、地球に帰れないまま死んでしまった宇宙飛行士に付き添うサーバント・ロボットにまつわるエピソードです)ってお話で、これは一種の悲しみに満ちた教訓話なんですが、このラスト、欲をかいたばっかりに永遠に主人の世話をするロボットによって地球に帰れなくなってしまった男の末路に、言いようもない怖さを感じてしまったんでありました。

 さて今回のアンソロジー、"ロボットの夜"というメインテーマの下に3つの副題が用意されておりまして、それぞれが未来の怖さ、ロボットと人間の関係の怖さ、ロボットという機構の怖さみたいな物をあらわしているのだろうな、と思えるのですが、趣味的には最後のテーマ、サブタイトル、"機(からくり)巧人形の幻想"にあつめられた作品群が楽しかったかな。ロボットと人間、ってテーマにはどうしても似たパターンで、なおかつミステリ仕立て(まあロボットとミステリは切っても切れない関係なんですが)のモノが集まってしまって新鮮味が薄れてしまった、という恨みがあったかもしれない。

 今回も「いいな」って思った作品はいくつかあるんですが、振り返ってみると、みんなどちらかというと古き良き系、とでもいうのか、最近とみにその傾向が強くなってて、自分でもいかんなぁと思ってしまいつつも、昔風のシンプルなSFに好みが集中してしまいました。困ったもんです。そういうバイアスがかかった上で今回のお薦めは、渡辺浩弐氏の「2999年2月29日」。こういうSF、昔は学習雑誌の夏休み特集とかに必ず一つは載ってたよなあ、などと妙に懐かしく思っちゃった。

00/11/27

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