ギャラクティックの攻防

銀河の荒鷲シーフォート(6)

表紙

デイヴィッド・ファインタック 著/野田昌宏 訳
カバーイラスト 山本えみこ
カバーデザイン ハヤカワ・デザイン
ハヤカワSF文庫
ISBN4-15-011327-0 \820(税別)
ISBN4-15-011328-9 \820(税別)

 シリーズ第6作。訳者の野田さんの評を借りるならば"偏屈者"の我らが主人公、シーフォートもいまや60代。国連事務総長としてあいかわらずの偏屈ぶりを発揮するシーフォートだが、自分自身の悲壮な活躍によってようやく退けた"魚"の脅威にかわって地球は深刻な環境破壊の危機に直面していた。だがここに至ってもなお環境を省みない企業家たちの増産態勢はやむ気配を見せない。さらにシーフォートが唯一心の拠り所としてきた光輝ある宇宙軍内部にも、不穏な動きが形をなしつつあった………。

 "偏屈"ってなあちょっと可哀想かな、てな気もしますが、やっぱりどうしようもなく偏屈で、曲げるって意識がないくせに妙に知恵が働くばっかりに、毎回毎回華々しい栄光と引き換えに筆舌に尽くしがたい悲劇を味わうシーフォートですが、今回もまあこれでもかというぐらい精神的にも肉体的にも打ちのめされ悲しみを味わうワケですが、まあこのへんはこのシリーズをお読みの方なら先刻ご承知。主人公シーフォートのさんざんな凹みっぷりにマゾヒスティックな快感を味わって楽しむスペースオペラ、女性ファンが多いってのもうなずけるよ(笑)。

 大変楽しめる作品なんですがこのシリーズ、その背景にはかなり大きなウエイトで"神"の存在が控えています。隆盛を誇ったアメリカ、日本が経済的に破綻し、いったん荒れ放題になった世界情勢から、新旧キリスト教をベースにした新たな"神"の教えをバックボーンにした国連によって統治される世界政府、ってえ設定がなかなか、神様ってものを信用できないオレ的には(ついでにいうとこのお話の世界では没落しまくってる日本人てこともあり)胡散臭さがつきまとう(^^;)。登場人物、とりわけ宇宙軍内部にもアジア系やアイルランド系の名前が圧倒的に少なく、替わりにラテン系の名前が多いのも、それなりに考えてのことなんでしょう。

 もちろんこの"神"って存在が、シーフォートの悲劇性を高めるうえでも重要な役割をはたしているワケで、決して頭からダメだと決めつけるつもりはないんですが、それでもやっぱりオレなんかは「神様ってそんなにエエのん」などと少々意地悪く思ったりしちゃうんですよねぇ(^^;)。

 などといいつつ読み応えは保証できるシリーズ。読んでる人にはいまさら説明不要。まだの人は是非第一作目から。

00/10/3

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