PSA異常の方が前立腺生検を受けるか悩んだ時に読むページ

癌の可能性が高い人だけに日帰り6箇所生検を行っている横浜市都筑区の木村泌尿器皮膚科です。
健診でPSA異常を指摘され、入院検査を指示されて悩まれている方に読んで欲しいページです。

アボルブ投与中に減少し続けていたPSAが上昇し始めたら要注意


Usefulness of prostate-specific antigen (PSA) rise as a marker of prostate cancer in men treated with dutasteride: lessons from the REDUCE study
Michael Marberger, Stephen J. Freedland, Gerald L. Andriole, Mark Emberton, Curtis Pettaway, Francesco Montorsi, Claudio Teloken, Roger S. Rittmaster, Matthew C. Somerville, Ramiro Castro
BJU InternationalVolume 109, Issue 8, pages 1162–1169, 2011

REDUCE studyをしたグループの論文です。REDUCE studyはアボルブが前立腺癌を予防できるか、でしたが、 今回は、アボルブ投与中に癌になった人、ならなかった人、コントロール群で癌になった人、ならなかった人の、PSAの経時変化をまとめ、 アボルブ投与中に減少し続けていたPSAが上昇し始めたら再生検が必要なシグナルとの、結論を導き出しています。

ただし、筆者たちは同じ検討をすでに行っていて、J.Urol.に報告済みです。 その時は、アボルブ投与開始6カ月のPSA値をベースラインとして、そこからの上昇の有無をまとめたものですが、 今回は開始6カ月以降も下がり続けた最低値をベースラインとした検討です。

試験企画段階の目的と違う観点から、データをまとめ直す作業はいろいろ制約を伴います。 REDUCE studyでは、主治医にはアボルブ投与中の人のPSA値は倍にして、報告されます。 REDUCE studyは二重盲検試験です。PSAが下降すれば、主治医にアボルブ投与群とばれてしまいます。 いつも偶数だとアボルブ投与群だな、とばれるので、時々0.1プラスして報告する念の入れようです。

主治医は報告されたPSA値に基づいて方針を決めたわけですが、 今回の検討では、本当のPSA値(主治医に伝えていない)がベースラインを越えたときに生検していたと仮定したら正診率はどうだったか、のシミュレーションです。 thresholds defined post hoc というのがよく理解できませんでしたが、 データを収集し終わってから決めた「後出しじゃんけん基準」という意味でしょうかね。

PSA乱高下のノイズを取り除くために、生検後42日以内のPSA値は集計から外した、など、 集計方法についての「言い訳」に多くの労力が割かれており、難解な論文でした。

30日でも90日でもなく、なぜ42日なのでしょう。 この辺りが「後出しじゃんけん」と著者たちも認めるところでしょうか。

不都合なデータを取り除いたおかげか、PSAの経時変化を示したグラフは単調減少から単調増加に転じる美しい曲線で、 減少し続けていたPSAが上昇し始めたら生検だな、と一目瞭然のグラフです。 N Engl J Medでもなく、J.Urol.でもなく、BJU Internationalに載った論文ですが、 短時間のプレゼンでアボルブ投与中のPSAの見方を説明するには、最適な内容かもしれません。

2013年5月10日の院長ブログ原稿


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