PSA異常の方が前立腺生検を受けるか悩んだ時に読むページ

癌の可能性が高い人だけに日帰り6箇所生検を行っている横浜市都筑区の木村泌尿器皮膚科です。
健診でPSA異常を指摘され、入院検査を指示されて悩まれている方に読んで欲しいページです。

低リスク前立腺がんにアボルブ(REDEEM試験)


Dutasteride in localised prostate cancer management: the REDEEM randomised, double-blind, placebo-controlled trial
Neil E Fleshner, M Scott Lucia,Blair Egerdie,Lorne Aaron,Gregg Eure,Indrani Nandy,Libby Black, Roger S Rittmaster
Lancet,379,1103-1111,2012

アクティブサーベイランス(PSA監視療法)してよい低リスク前立腺癌の患者を2群に分け、 アボルブとプラセボを投与し、3年後の生検で癌が進行したかを見た、前向きランダム化比較試験です。

アボルブがらみのランダム化比較試験は、CombATREDUCEに続く3つめの論文です。 REDEEMとは、REduction by Dutasteride of clinical progression Events in Expectant Management。 「予期管理中に起こる臨床的進行事象をアボルブで減らせるか」。

147人がアボルブを、155人がプラセボを投与されました。 アボルブ群では43例が生検での進行(病理学的進行)を認め、プラセボ群では51例が進行を認めました。 危険率は0.079で、統計学的には有意ではありませんでした。

ただし、著者らはこの3年間に手術や放射線・ホルモン療法に移行した症例も進行例と定義。 アボルブ群では11例が、プラセボ群では19例が、治療介入(臨床的進行)されていました。 病理学的進行に臨床的進行を加えると、 アボルブ群では54例が進行し、プラセボ群では70例が進行したことになります。 これだと、危険率は0.009で、統計学的に有意でした。 アクティブサーベイランスにアボルブを投与することは前立腺がんの進行を遅らせる、 との結論が導き出されました。

この試験の問題点は、PSAの値がそのまま、主治医・患者に伝えられていること。 REDUCE studyでは、主治医にはアボルブ投与中の人のPSA値は倍にして、報告されました。 いつも偶数だとアボルブ投与群だな、とばれるので、時々0.1プラスして報告する念の入れようでした。

今回のスタディーでは6ヶ月目のPSA値を受け取った主治医はアボルブ群とわかり、 二重盲検試験になっていなかったかもしれません。 アボルブ群ではPSAが下がるので患者が安心して、手術や放射線・ホルモン療法を希望しなかっただけかも知れません。

2013年11月29日の院長ブログ原稿


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