泌尿器科医・木村明の日記


昭和のラスト論文


[木村泌尿器皮膚科公式ブログ](2012年秋)

東芝中央病院にいた昭和63年に書いた、
アンチアンドロゲン剤長期投与肥大症患者における超音波計測による前立腺重量の経時変化
これが私が昭和に書いたラスト論文です。
この論文は原稿がフロッピーに残っていて(それまでは400字原稿用紙)、すでにネット上には公開してありましたが、
図をわざわざスキャンしてはいませんでした。




昨日、院長室にある別刷りの図1~5を携帯で撮影。
論文の本文の間に挟むことにしました。
前立腺の大きさを超音波で正確に計測する意義は、
前立腺肥大症においては、ハルナール(アドレナリン阻害薬;前立腺縮小効果なし)の登場で、
前立腺癌においては、PSA(腫瘍マーカー)の登場で、
急速に失われました。
超音波を研究テーマにしていた泌尿器科医は、
その後インパクトファクターの高い論文を書くことはなくなったわけです。
平成1年は私個人にとっては厄年でしたが、
それがなくても、アドレナリン受容体の前立腺内の分布の研究が主流となった平成の世には、
分子生物学(mRNAのPCRとか)ができない私は不要な研究者だったわけです。
なんか、自分で書いていても、iPod時代のウォークマンみたいで惨め!
まあ、今はアドレナリン受容体やコリン受容体のプロもインパクトファクターの高い論文を書けなくなっていますから、
どんな世界でも、進歩についていくのは大変です。
ついていくだけではだめですね。時代をリードしないと。
でも、アボルブのおかげで、前立腺肥大症における超音波計測の意義が再認識されてきたようなので、
昔の業績を再紹介することに力を入れてみました。
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