泌尿器科医・木村明の日記


理想のコホート:ゆりかごから墓場までの国


[木村泌尿器皮膚科公式ブログ](2012年秋)

今やPSA検診推進派にとってのバイブル:イエテボリ論文
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Himawaritomte先生のおっしゃる通り、日本語では、Goeteborgはイエテボリとかヨーテボリとか、表記されます。
50~64歳のGoeteborg市の男性20000人を二つに分け、片方にはPSA検診のお誘いの手紙を送り、同意した7500人をPSA検診群。
もう一方の群には何も手紙を送らず、対照群。
その後、14年間の死亡診断書を集計しただけ。
これで有意差が出せるのは、
住民が引っ越さないのと、
医者が今は通院していない患者さんの死亡診断書を取り寄せて見ることができる、
という特徴があるからでしょうね。
スエーデンでは、ゆりかごから墓場まで、引っ越さずに同じ街で過ごしているのでしょうか。
日本ではこんな統計は無理です。
スエーデンでは、emigration(自国から他国への移住)がない限り、死亡診断書はすぐ手に入るようです。
スエーデンはコホート研究をやるのに、理想の国のようです。
日本で、このような研究をやるには、
病院を受診した人に、同意書を取ってから、くじ引きをしなければなりません。
しかも、医療機関にフリーアクセス(同じ症状で何軒でも受診できる)の日本では、
対照群のはずの人が、別件で別の病院を受診して、ついでにPSAも測っておきましょう、
なんてことも起こります。
当院のがん治療成績を集計しようと思っても、医者は行政から、
当院を受診した人の14年後の死亡診断書を取り寄せるなんてこともできません。
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