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記憶に残るのは合併症患者さん


勤務医時代に術後合併症が起きた人のことはよく覚えているものです。

泌尿器科で一番大きな手術は、膀胱がんで、膀胱を取った後、腸で膀胱の代わりを作る手術。

腸で作った膀胱の一部が腐ったりすると、お腹の中に、尿が漏れるのです。

そうなると呼吸管理も大変で、という話はこの前書きました

術後合併症の管理で、すごく苦労した人のことは何十年経っても覚えています。

お名前もしっかり覚えています。

逆に、スムーズに手術が終わって、予定通り退院された方は記憶に残りません。

前勤務先を退職して3年半。

以前の勤務先で担当させていただいた患者さんが、本当にたまにですが、私のクリニックにいらしてくださる事があります。

手術した患者さんは、だいたい名前と顔を覚えています。病名までは思い出せないことがあります。

ESWLのような手術とは言えないような処置のために短期間入院されただけの方については、お顔も覚えていない事もあります。

さらに外来で診察しただけで、入院されていない方は、まず覚えていません。

私が開業した頃は、個人情報の扱いがすごく厳格になった時期で、私は受け持ち患者さんの情報はいっさい持ち出しませんでした。

引き続き私にかかりたい、とおっしゃってくださった方については、私宛の紹介状を、ご本人に渡して持ち出していただきました。

泌尿器科の術後処置は特殊です。毎日回診時に、一番恥ずかしい場所を医者やナースに見せるわけです。

それなのに、私のクリニックに来て、すごく懐かしそうな顔で話しかけてくださっても、私が忘れてしまっていたら、すみません。

それはその人の手術がすごく順調だったのです。
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