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 スロヴェニア通信
 【 春の草を染めつけたナチュラルなイースターエッグ】
 キリスト教の春の祝祭、イースター(復活祭)は、スロヴェニアでも大切にされていて、ごちそうを作って家族でお祝いします。
 
 そんなイースターで欠かせないのが、イースターエッグ。
 簡単に言えば、きれいな彩色を施したゆで卵です。
 なぜゆで卵がイースターに欠かせないごちそうなの?と疑問に思われる方もあるかもしれません。
 今と違って、昔は卵がたいへん高価で貴重な栄養源でしたから、
 当然といえば当然のことですが、卵を命の象徴とみなして大切に考えたからだと言われています。
 
 そんなイースターエッグですが、スロヴェニアから素敵な写真が届きました。
 春の草をデザインした渋い色合いのイースターエッグ。
 よく知られている派手な色彩のものや、伝統的な赤と黒のろうけつ染のデザインとはちがい、とてもナチュラルなイースターエッグです。
 まるで日本の草木染めの作家さんが作ったかのようにワビサビを感じるデザインですが、
 これもスロヴェニアの伝統的なイースターエッグの手法なのですよ。卵はふつうの鶏の生卵を使います。
 卵の殻の上に、野原でつんだお気に入りの春の草をのせて、きれいな模様になるように配します。
 
 それを、あらかじめ乾かしておいた赤玉ねぎの皮で覆い、布でていねいに、
 しっかりと包んで固定するのです。その状態でゆで卵にして、そっと布をはずすと、
 草があった部分だけが、赤玉ねぎの色に染まらずに残り、このような美しい模様が出来上がるのです。
 
 イースターエッグはイースターの数日前に作って、
 イースターまで飾って楽しんでから、イースターの朝に食べます。
 ゆで卵が日持ちするように、ゆで上がった卵の表面にはラードを塗ります。
 こうすると卵の殻にあいた細かい穴がふさがって、空気が入らず、
 簡単には腐らないと言われています。卵の表面につやが出て、見た目にもきれいです。
 
  このシンプルな美しさのイースターエッグに、スロヴェニア人の美意識を見る思いがします。自然と共に生き、自然の中に美を見出し、持ち前の手先の器用さで生活の中に芸術を作り出してゆく。
 そんなスロヴェニアの美意識に、私たち日本人の美的感覚ともたいへん近いものを感じます。
 
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