【 ふわふわパンは、パンじゃない?】
            
            
            ピカポロンツァでは、自家製のパンを出していますが、ふんわりとした白パンではなく、
        しっかりした黒パンです。そばや全粒粉で作った昔ながらのシンプルなパンで、食べ応えがあり、
        しっかりとお腹がふくれます。日本では、パンは食事というよりも、おやつや軽食感覚で、
        軽めのものが好まれますが、スロヴェニアでは、やはりパンは食事の中心で、 しっかりとお腹がふくれる
        ことが大前提です。ですから、甘いパンや、ふんわりしたパンは普段の食卓には出てきません。
        
        そんなスロヴェニアで、その昔、パンにまつわる厳しい決まりがあったそうです。
        当時のパン屋さんには、今のようにいろんな形やサイズのパンが並んでいたわけではなく、
        大きな丸いパンだけが作られていました。その大きな丸いパンは、1キロ分の粉で作ったもので、
        人々はそれを買って帰って、端から少しずつ切りわけ、毎日の糧として大切に食べていました。
        
        ですが、パン屋さんの中にインチキする者もあり、粉に多めの水を混ぜて、
        ふんわりと膨らませた軽いパン売る店が出てきたのです。つまり、1キロの粉で作ったパンと
        同じ大きさだけれど、使っている粉は1キロ以下、食べてもお腹がしっかりと膨れないパン
        というわけです。知らずに買わされたお客さんたちは、たまりません。 インチキだ!という怒りの声が
        あちらこちらで上がり、インチキをしたパン屋さんに対する厳しい罰則が設けられました。
        
        抜き打ち検査で、パンの重さを量り、極端に軽いパンを売っていることがわかったら、即刻、処罰!
        パン屋さんは捕まり、大きな籠に入れられて、リュブリャナの真ん中を流れるリュブリャニッツァ川の橋に
        吊り下げられました。そして、皆の目の前で何度も川につけられる、という恐ろしい罰を 与えられたのでした。
                    
        見せしめの意味もあったのでしょうが、おそろしい罰ですよね。
        食べ物の恨みは深いといいますが、スロヴェニア人たちのパンに対する思い入れの深さが
        うかがえるというものです。ちなみに、現在、このリュブリャニッツァ川の橋の上には、
        この罰に使われていた道具が観光のために置かれています
        
        
        ここに籠を吊り下げて、川にドボン!とやられたわけです(こわっ!)。