| 【昔話が教えてくれること】
 
 
   スロヴェニアに 伝わる一つの昔話をご紹介します。 昔、スロヴェニ アのある村に一人の勇者がおりました。誰よりも強く、 恐れというものを知らない若者でした。
 【この村には何 一つ、恐ろしいものなどない。一度くらい、
 恐ろしいものに出会ってみたいものだ。
 村の外に出れば、恐ろしいものに出会えあるのだろうか。
 ようし、この村を出て、恐ろしいものを探しに行こう。】
 こうして、勇者 は旅に出ました。
 
 ところが旅先で も、勇者は誰よりも強く、何を見ても恐ろしいと思うことがありませんでした。
 長い長い旅を終 えて、勇者は村にもどってきました。
 【この世の中 に、恐ろしいものなど何もなかった。
 恐ろしいものに出会いたかったが、私にとってそれは無理な話らしい。】
 勇者は恐ろしいものを探すことをあきらめました。
 そして、村の娘と結婚し、やがて子供が産まれました。
 
 そして数年後の ある日、勇者は生まれて初めて、恐ろしいものに出会いました。
 1匹の大きな蛇が、遊んでいるわが子のすぐそばで、かま首を持ち上げていたのです。
 それを見た勇者はあまりの恐ろしさに凍りつき、声を出すこともできませんでした。
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