雪岳山(ソラクサン)   2011年10月7日

五色温泉登山口10:10〜12:05(山頂まで2.5km標識)〜雪岳滝[休憩]〜13:36(山頂まで1.3km標識)〜14:50大青峰15:05〜15:20中青待避所 15:35〜15:55大青峰〜16:50(標高1110m地点)〜17:45(登山口まで1.3km)〜18:35五色温泉登山口

★個人で雪岳山に登るための情報を特設ページでご案内します!
(私たちの経験を元に、個人でも雪岳山にトライできるよう、別ページに詳細な情報を掲載します。 是非参考にして下さい。ただし、それなりに自助努力もお忘れなく・・・。)


2009年のハルラ山に続き、韓国第3の標高の雪岳山に登ることになった。日本からツアー登山も出ているが、12〜15万円位と高い。
円高でもあり、また今までの経験から、是非自力で登ってみようということになった。今回もハルラ山と同じく、Mさん、iさんと一緒で心強い。

ハルラ山に比べると雪岳山はハードルが高い。
というのも、ソウルから遠い(鉄道がないので高速バス利用)、コースタイムが長いので日帰りは相当ハード、また泊る場合は自炊で『待避所』(shelter)泊りとなること等。
例によって詳しい資料は入手困難、ネット上の知識と韓国国立公園HPからの情報、ガイドブック(英語版を含む)、ツアー会社のプランなどから計画を練った。
それでも詳細が掴み切れず、少し不安を抱えたまま羽田を飛び立った・・・。

雪岳山はソウルから高速バスで束草(ソクチョ)へ向かい、そこからバスを乗り換えて各登山口に向かう。最高峰は大青峰(テチョンボン)1707.9mである。
登頂をめざす主なコースは3本と考えてよいだろう。HPで『待避所』(自炊の山小屋)の予約を予定し、1泊で縦走しようとしたが、15日前のネット予約で即時満席、予約できなかったことからコース変更を余儀なくされた。(しかし、結果的にこの変更がなければ登頂は不可能だったので、不幸中の幸いだったかも知れない。)

私たちは五色温泉から登り、小青(Socheong)待避所で泊って、千仏洞渓谷を通り、雪岳洞(ソラクドン)に下る計画にした。(当初は逆回りで、喜雲閣(Huiungak)待避所泊を予定)
かなりの人出と聞いているので、泊れるのかどうか半信半疑だったが、五色温泉から登ればキツイ代わりに必ず初日に登頂できる利点もあるのでよい選択肢だと思っていた。

朝5:50。ホテルにタクシーを呼んでもらい、江南(カンナム)の高速バスターミナルへ向かう。切符は昨日のうちに窓口に出向いて購入。朝一番(6:30始発)の束草(ソクチョ)行きバスに乗る。
夜明け前のソウルを出発、一路ソクチョに向かう。途中、ドライブインで1回のトイレ休憩(15分)を挟み、9:10、定刻にソクチョ市内高速バスターミナルに到着。建物の裏手にある小さなブースがインフォメーション。ここで雪岳山の地図を貰おうと思ったが、 ハングル版しかない。まあ、必要な情報は既に得ているので、早速客待ちをしているタクシーで五色(オセク:Osaek)温泉に向かう。<所要約30分、W38,000=約2,550円>

登山口にはしっかりした建物と広いトイレがあり、既に韓国の団体さんがバスから降りて支度していた。

タクシーの運転手が、小屋の予約はあるのか、無いと泊れないから日帰りになると言っていたので、そんなはずはない、と念のため係員に問い合わせると、同様の事を言う。
事前に調べた英語版HPでは、5つある待避所のうち、ネット予約可能なのは2か所だけ。ほかは泊れるはずと聞くが、どこも既に満員という。
泊るつもりでこの時間に登り始めるのだから、日帰りは無理。とにかく、上に行ってから何とか交渉してみよう、歩き始めることにする。

登り口の標高は400m。標高差は1300mもある。登りのコースタイムは4時間(下りは3時間)。調べた個人のブログ・HPにはみな「急な登りが続く単調な」コースと書かれている。 確かに4時間連続で登りっぱなしはきついだろうが、登り切れば後は下るだけ、と何事も楽観的に考えて歩き始める。

ハルラ山同様、韓国の山はコース整備が行き届いており、標識も随所にあり、道迷いの可能性はゼロ。だから誰も地図を手にしていない。
今日は気温も高めで、石段のような道を歩くと汗が滲んでくる。ちょとザラザラした道は段差もきつくて確かに歩きにくい。 こんな急坂が延々と続くのかと思うとちょっと気が重くなるが、そんな時にようやく花が目に入りだす。ナギナタコウジュにそっくりだ。 それからヤクシソウ、ヤマラッキョウも。

これに元気づけられて頑張って歩いていると、カサコソ音がする。枯葉の中を何かが動いている、と思った瞬間、現れたのはリス。
人を怖がらず、目の前に出てくる。カメラを取り出し、素早い動きを目で追うが、なかなか止まってくれない。 でも、気分が一気に明るくなって、笑顔が戻ると視界が開け、青空の向こうに綺麗な山が見えてくる。ちょうどここがちょうど1/4地点のようだ。(登山口から1.3km地点。)
ちょっと開けた場所があるので座るのに好都合。昨日買い出しした果物を食べて一服。先は長いが、急がず焦らず・・・。

相変わらずリスがチョロチョロ出てくるのは可愛らしい。韓国の人たちも続々と登ってくるが、ザックは小さめ、特に女性は決まって細みの黒いパンツに、体にぴったりした赤や紫のウェア、そしてサンバイザー。ストックを持つ人はダブルで、伸縮性がなく重そうに見える。

一服後は少し傾斜が緩み、雑木林が明るくて黄葉も見られ、気分的にかなり楽になってくる。が、鉄製の梯子が続くので相変わらず足には厳しい。

次のポイントはほぼ中間点の雪岳滝。この辺りは一旦下ったり、少し平坦になって、休憩できる場所も見つけやすく、少し休憩。雪岳滝は滑滝のようだ。大岩がすっぱり切れた場所もあり、足元ばかりに気を取られ、たまに顔を上げるとびっくりするような景色が広がる。
トリカブトも見られ、よく見ればミスミソウやエイザンスミレの葉もあるので、春先は花が綺麗だろう。


どこまでも続くキツイ登り。鉄の階段、段差の大きな石段、そして丸太の階段・・・。

このあたりからは鮮やかな紅葉も現れ、休憩したこともあって、元気を回復し、またせっせと階段を登る。が、今度は丸太の階段が続き、土の道が恋しくなると、下山者が急に増えてくる。中学生くらいの子供たちが続々と降りてくるが、引率らしき大人もいるので学校登山だろうか。

私たちを除けば、外国人は欧米人男性が一人、若い女性が一人、ほかはすべて韓国人のようだ。 話をすると彼らもピストンらしい。どうやら小屋は予約なしではどこも泊れないのは事実のようで、泊めてもらうにはタフな交渉が要りそうだ・・・。
山頂までもう少し。辺りは見事な紅葉で、カメラストップが増える。真っ青な空に真っ赤な紅葉。時期はバッチリだったようだ。

いよいよ山頂まで0.5km地点まで来ると流石に道も緩やかになり、沢山の人が行き交い、賑やかだ。もうすぐだ、と思うと自然と笑顔がこぼれる。
とうとう念願の雪岳山に登頂できるのだ。

もうすぐ山頂!

見晴らしが良くなって急に風が強まるともうそこは山頂の石組み。一気に360度の視界が開け、今まで見えなかった向こう側にはグランドキャニオンか、という絶景が広がっているではないか。
岩の形が素晴らしく、少し日が傾いているので霞み始めているが、流石に登り甲斐のある、見飽きぬ光景だ。

沢山の人が順番待ちで記念撮影中。途中、抜きつ抜かれつの欧米人男女も写真を撮っているので、私達も写してもらう。Congratulations!と声を掛けられ、そうか、そうだな〜と思い、Same to you!と返しておく。
しばし満足感に浸りつつも、これから交渉が待っているのだ。

急坂を滑らぬように降りて、まずは予約制の中青(チュンチョン:Jungcheong)待避所へ。定員120人の小屋とあって、既に大勢がチェックイン中。係員はハングルしかできず、入口のわずかなスペースでいいから泊らせてくれと粘るが、ネットで予約なしでは無理、と取りつく島もない。
では予約制でないはずの小青待避所は、と聞くと、身振りで判断するにどうやら今は使えないようだ。(閉鎖中らしい。そういえば、登山口の係員も同じことを言っていた。)

こうなるとコースタイムから考えても明るいうちに辿りつける小屋はほかに無く、諦めて戻るしか道がない。

中青待避所

もう時間もないし、では頑張って戻ろう!とザックを背負い直し、山頂へ登り返す。ここから更に3時間の下山だ。しかし、 あのきつい段差を今からまた1300mも降りるのかと思うと、流石に気が滅入る。 自炊のつもりで持ってきたガスやコッヘル、そして食料が急に重く感じる。

ヘッドランプは勿論持っているし、登山口は日没後2時間まで空いている。多分それまでには下山できるだろう。問題は、下山後どうするかだ。
そんな話をしながらも、とにかく特急で下っていく。いざとなると日頃山の会で馴らされているせいか、もう文句も言わず、 ガンガン降りて行く力が残っていることに、我ながら驚かされる。
大丈夫、問題なく下山できる!・・・そんな自信が湧いてきた。日本の山女(山ガール)は強いんです!?
勿論、急降下だし石車はあるし、滑ったら怪我では済まないので、そこは慎重に足を置きつつも、降りるのが速いこと速いこと。

途中で抜かした韓国人グループに尋ねると彼らは五色温泉のコンドミニアムに泊まっているとか。さてどうしようか、あれこれ迷いつつも、順調に降りれば暗いと言えども 時間的にはまだ早く、とにかくバスターミナルに戻ってから考えよう、と意見がまとまった辺りで、先行していた欧米人+韓国人大学生の3人に追いついた。

韓国の人はみな、山の中でも携帯を握りしめている。彼女もi-phoneか何かを見ているので、英語でバスの便について尋ねてみると、親切にも検索してくれる。しかし、時間もかかりそうなので、引きとめては悪いし、私たちも先を急ぐので、登山口でタクシーを呼んでくれるかと頼むと快諾してくれた。
丁寧にお礼を言って、では先に降りていますから、と追い抜いていく。

それだけで随分ほっとして、あとは私たちのペースでどんどん降りて行くと、何人追い抜いたか分からないが、しばらくは前方に人影がなくなった。日は傾き始めているがまだ明るい。

ああ、日が沈む!

見覚えのある雪岳滝の鉄階段を下り、余り休憩も取らずにおり続ける。ああ、もう夕日が山に隠れてしまうという頃、登山口まで1.3km地点に到着。何とか残り1/4地点まできたのだ。

しかし、ここからが一番の急坂。疲労も頂点に達しているし、暗くなり始め、足も疲れきっている。お互いに励まし合いながら、「まずは無事に下山すること」だけを考えて一層慎重に降り続ける。

そろそろ下界の音が聞こえ始め、あと少しかなと思うが流石に暗くなってきたので、ヘッドランプを出して点灯する。 足元を照らしながらスピードダウンして降り続けるが、辺りは真っ暗、3人一緒でなければ気味が悪いだろう。

ここまで頑張ったのだから、絶対に怪我しないように降りようね、と足元を確認しつつ進むと見覚えのある鉄の橋を渡り、その先に明かりが見え、ようやく登山口の事務所に辿りついた。
18:35、下山完了。山頂への登り返し20分を加えて3:20のコースタイイムを、3時間で降りてきたのだ。それに、1日で標高差1300mの往復は私の新記録。

私たちが追い抜いてきたグループは全て男性だったが、途中で精魂尽きた感じで座り込んでいた。まあ、日頃運動していない体型の人たちだったので、更に下山には時間がかかるだろう。
また、欧米人女性は足元が何とサンダルで、足を引きずっていたので、彼女たちもまだ着くまい。
気がかりだったタクシーは、下山者を見込んで数台が客待ちをしているので、呼んでもらう必要が無くなった。安心した半面、親切な大学生に連絡しなくては、と心配していたら、男性の方が先に降りてきて、もうすぐ女性陣も来ると言う。
トイレに行って戻ってくると、幸い彼女たちも無事降りてきて、お礼を言ってからタクシーに乗り込んだ。

結局、ソクチョに戻ってもこの時期のホテルは満員だろうということで、運転手に心当たりをたずね、途中でホテルのフロントで尋ねるが満員。ほかのホテルを紹介してもらって、無事泊る場所が見つかった。
外食する元気もなく、また泊るつもりで食料を持っていたので、部屋でアルファ米やフリーズドライの食事にありついた。 広い部屋でオンドルも入っていて、楽しいハプニングとなった。

翌日は土曜日、道も混むだろうからと早くバスターミナルに戻り、7時のバスでソウルに戻った。

ルートマップ


山行中の画像はブログでもお楽しみください。


・五色温泉コースの往復は非常に厳しいです。出来れば途中一泊で縦走がよいでしょう。でも、日頃山を歩いていれば、 不可能ではありません。(山頂までの往復で7:00のコースタイム)
・単調な登りが続きますが、目をやれば自然林やお花もあり、リスも出てくるので、私たちはそれなりに楽しく歩きました。
・山の中はハングルか英語が読めれば現在地が確認できます。でも、ただまっすぐ歩いて行けば往復可能です(笑)。
・このコースは登山口と、山頂から20分下った中青待避所以外に避難所もトイレもありません。水は待避所に自販機があります。
・ソウルから雪岳山への往復の実際は、別ページで詳しくご紹介します。頑張ってトライしてみて下さい!


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