一度登ってみたかった御正体山(みしょうたいやま)、1681.6m。交通の便が悪く、どこから入っても長いコースで行きそびれていた。
しかし、この前の加入道山の折に貰った道志村のパンフに、御正橋からのコースが載っており、昭文社の地図でも実線のルートなので、これを歩いてみることにする。
問題は、駐車スペース。幸い、このコースや駐車スペースについて詳しく紹介してあるサイトの情報を得て、3台までは停められると考え、出かけてみる。万一の場合には、道の駅から鳥ノ胸山にすればいいし、と。
道の駅「どうし」を通過後、3キロほど先の右折地点が良く分からない。どうも行き過ぎたようでまた戻る。 目印と思ったバス停「御正橋」は分かりづらく、でも何とか標識を読み取ったSさんの目の良さに助けられ、無事細い道を入っていく。
細い道を上がっていくとどうやら別荘地のようだ。道は舗装で意外と安心。そのうちに未舗装になり、凸凹が気になるようになると道の両側に小さい車なら1台ずつ停められるようなスペースがあり、ここに停める。民家のすぐ上なので、人目もあり、安心だ。(注:このすぐ先のT字路の先、登山口手前にも2台分のスペースがある。]
林道と駐車スペース(画面右側)
熊出没注意の看板もあり、また少人数なので鈴をリンリン鳴らしながら歩く。
歩き始めは沢がらみで、小さな渡渉もあるが、道は明確だ。この周辺で先週トレール・ランニングがあり、練習で入った人が多いようで、踏み跡がある。(*トレ・ランの本コースは、道坂峠〜御正体山〜山伏峠〜菰釣山〜鳥ノ胸山〜菜畑山などの周回コース)
少し分かりづらいのは、沢がちいさく二股になって、その両岸の山腹にどちらもピンクのテープがあって、どちらに進もうか迷う所がある。少し進んでみれば確認できるのだが、ちょうど中州のようになった場所の小高い丘の左を巻くように進むのが正解。(画像参照)
正しく進めば小さなケルン[と、丘の上に祠]があるが、往路からは見えない。
進路に迷う地点。両側に沢と山腹、真ん中に小さな起伏(丘)がある。
丘の左を進む。 (反対側から見れば、祠とケルンが分かる)
特にこの地点から見た左手の斜面には、はっきりとした道がついていて、そこにもテープがあるので誘われそうになるが、立ち止まってそれぞれのコースを見渡すと、大体はどれが正解か分かるように思う。
正しく進んでいれば、すぐにケルンや目印があり、コースは沢を離れて稜線に向かい、まず左に折れて山腹をジグザグに登り始める明瞭な道となる。
(何の目的か、あちこちに沢山のピンクのテープが目立つが、惑わされないこと。地図と方角を良く確認して下さい。) それを除けば、あとはよく踏まれ、藪もなく、予想外に歩きやすいコースだ。
気分良く歩けるが、急登は急登。汗をかくと今度は虫が煩く、虫除けスプレーで休憩の度に撃退する。 若葉が眩しく静かなコースだ。なかなかの急登もあり、ゆっくり歩く。ほぼ尾根線に沿って上がっていき、左手にピークが見えてくる。久しぶりに良い汗をかきながら歩く。
地形図とにらめっこしながら登っていくと、左手の樹間から覗くピークが随分近づいてきて、何だかすぐにも辿り着けそうな感じ。もうすぐ稜線かなあ思うと、ルートは尾根を右に巻きはじめ、そのうちに稜線出合となる。[*稜線出合[白井平分岐]は地図上の鞍部と一致しているようだ。] 気持ちのよい風が抜け、今度は山頂に向かって登っていく。急登とややなだらかな斜面の繰り返し。
何だか甘い香りが漂ってくる。その正体は?と探すが目ぼしい花もなく、見上げればミツバツツジが少し咲いているが、それでもなさそうだ。 地面に落ちた花びらの中にサラサドウダンが現れ始め、見上げてやっとその姿を確認。こんなに良い香りだったとは。
気分良く歩いていると、左手の藪で何かカサっと動く。蛇だ。
反射的に「マムシ!」と叫ぶとSさんがエッ!と言いつつも姿を見て、ヤマカガシだと教えてくれる。
細くて、お腹が赤と黒の賑やかな模様が目立つ面白い蛇だ。早速カメラで撮ろうともたもたしているうちに、向こうへ消えていってしまった。(注:ヤマカガシにも毒はあるそうです) 気を取り直して、えっちらおっちら急登を上がっていくが、周りのブナの新緑が目に優しい。しかし、ここでまた嗅覚の鋭いSさんから「何だかずっと獣臭いですよね・・・。」
余り鼻のよくない私も、そう言われれば先ほどの芳香とは似ても似つかぬ、いや〜な臭いがはっきり分かる。この臭いは・・・熊?! 必死に鈴を鳴らしながらギアを1段上げて登っていくと、ようやくなだらかになり始め、山頂が近づいてきた感じ。見た目やコースタイムよりも随分時間がかかっている。合目石もあるが、まだ八合目。 でも、今度はお花が慰めてくれる。色の綺麗なエンレイソウ、フデリンドウ、ハナイカダ、タチカメバソウ、ワチガイソウ、コチャルメルソウ、ヤマウツボに初めて見るシコクスミレ。 コバイケイソウの葉も目立つ。風に乗って下界の音も聞こえるが、どうやら山頂の先客の声も聞こえだし、ようやく熊の恐怖から解放される。
もう山頂もすぐそこ、ゆっくり虫眼鏡で花を眺めたり、思うままにレンズを向けて、のんびり歩いて山頂へ。相変わらず虫が多いが、ここでお昼にする。 だんだん他の登山者も各コースから上がってくる。展望はないが、立派な木のテーブルが目立つのは、浩宮が数年前に登ったからのようだ。 眩しい日差しに目を細めながら、楽しいランチタイム。稜線に出てからの思いがけないお花たちに気をよくして、また往路を戻ることになる。 いつもながら視点が変わるせいか、往路では見逃した花に驚かされる。Mさんの「あの花はなに?」の指先にはいつも珍しい花が。今度はルイヨウボタン。緑色の花は見落としやすい。ブナの大木も多く、本当に楽しい森林浴だ。
あっという間に分岐。ここからの急降下に気をつけつつ、あっという間に沢に至る。沢音で鈴の音がかき消されないよう一層鳴らしながら、無事に登山口へ。横浜市の水源の森となっているらしいが、ブナの森は緑のダム、豊かな自然を満喫したコースだった。
★出会った花★
 
左から:クワガタソウ [鍬形草]、 タチカメバソウ[立亀葉草]、 ユキザサ [雪笹]、
 フデリンドウ [筆竜胆] |
エンレイソウ [延齢草] |  WANTED! (葉の上にいた・・・昆虫?)
|  ハナイカダ [花筏] (葉の上に花が咲く) |
 シコクスミレ [四国菫] (太平洋側のブナ林に咲く)
|  ルイヨウボタン [類葉牡丹] (ボタンの葉に似るため) |  ヤマウツボ [山靱] (ブナなどの根に寄生する) |  オトコヨウゾメ |
*道の駅「どうし」を過ぎて、左側に「御正橋商店」がある地点で細い道を右折。うすれかけた「民宿ふるさと」の看板もあり。
(画面奥が御正橋商店、小さな標識もあり。この画像は帰路、車内から撮影したもの。)

|