智異山[チリサン]   2012年10月19日

中山里[チュンサンニ]6:30〜9:15ロタリ待避所9:35〜11:40天王峰(1915m)12:20〜13:20チャントモク待避所13:30〜<休憩2回、計25分>〜16:50白武洞[ペ(pe)ンムドン]
*[ ]内は発音を示す。

行動時間:登り約5時間、下り約4時間半
山行中の画像や、今回の旅行の記録はブログでご確認下さい。


今年も韓国の山へ。2009年は標高第1位のハルラサン(漢拏山1950m)、2011年は第3位のソラクサン(雪岳山1708m)、そして満を持して今回第2位のチリサン(智異山1915m)へ。 結果的には3回全て同じメンバー(Mさん、iさんと私)となった。前回と同じく紅葉シーズンを狙って10月とする。

私達もこの間に数度の韓国の旅(観光旅行を含む)を重ね、韓国語を習って4年のMさんに加え、この春から一念発起の私も韓国語が少し出来るようになったので、移動や食事、山歩き自体には何の不安もない。
しかし、この山行は計画段階から何度か諦めかけた。他の二山と違ってアクセスが非常に悪く、またそれを調べるにもネット上にも情報が非常に少ないからである。

紅葉最盛期でもあり、この数ヶ月の「竹島(独島)」問題もあるので、念のため今回も待避所の予約は諦め、日帰りとする。
智異山は非常に山域が広く、稜線を縦走すれば普通2泊3日になるが、日帰りとするため最高峰の天王峰に直登の最短コースを登り、 できればピストンではなく縦走を考える。登山口には早朝に着く必要があるので、今回は釜山から入って中山里(登山口)へ移動し、縦走して白武洞(登山口) へ抜けるコースにする。(体調その他の事情で中山里往復あるいはループも想定。)

問題は、荷物をすべて背負ったまま山に登らなければならないことだ。そこで下山後の「現地調達」を見込み、思い切って荷物を最小限にして行動することにする。
往路はJAL成田10:00〜12:15釜山、復路はJALソウル(金浦)19:15〜21:25羽田とし(55,080円)、宿は晋州(チンジュ)、南原(ナムォン)、ソウルに取る。

初日:釜山着後、釜山金海[プサンキメ]軽電鉄で沙上駅[ササンヨク]へ。すぐ近くの西部市外バスターミナル[ソブシウェポ[po]ストミノル]からバスで晋州[チンジュ]へ。バスはどんどん出発しており、1時間程度でバスターミナルに到着。町に1軒のホテルは満員だったため、予約サイトAgodaでバスターミナルそばのモーテルにダブルを3部屋予約。女性3人のみが訪れたため、孫のお守りをしていたご主人がちょっとびっくり顔。
部屋はネットの写真通りで、広くて清潔でオンドルも入っており、この値段(1室約3500円)なら満足。私の韓国語も通じたようで、無事に翌朝のタクシーも5:30に予約して貰い、一服後はプチ観光に出かける。

晋州城を見た後は早めに食事(カルビタン)を食べ、暗くなる頃宿に戻り、早めに就寝。お風呂に入れるお湯がチョロチョロとしが出ず時間がかかったが、部屋には冷蔵庫・給湯器もあって至れり尽くせり。

朝5時少し前に起き、買い置きのパンと暖かいコーヒーを飲み、ポットに熱湯を詰めて5:30に予約のタクシーに乗り込む。まだ星が出ているが、早朝にもかかわらずご主人と奥さんが起きてきて、見送って下さる。韓国の人はとても親切なのだ。運転手さんも割と気さくで、1時間ほどのドライブ中も安心して乗っていられた。相変わらず飛ばしているが、タクシーゆえに登山口まで入れて助かった。
(注:晋州から中山里までは頻繁にバスがある。ただし、バス停はかなり下の方なので、20〜30分かかるかと思われれる。)

トイレとゲートのある登山口には、乗用車用の広い駐車場と、売店と民宿を兼ねた建物が周囲に何軒もある。 ここに泊まれれば楽だろうが、日本からの予約は無理で、紅葉最盛期なので無謀なことは避けた。
ビジターセンター

ここで身支度を整え、予定通り6:30に歩き始める。外は明るくなり、とても静かだ。空気が冷たい。すぐに案内板、野営場と続いて山道に入る。
下の方でも紅葉が始まっており、毎度おなじみの石畳の道をゆっくり歩いて行く。韓国の国立公園なので、500mごとに位置と標高、距離を示す標柱が立っている。例えばこのコースは5番で、登山口に近い方から順に5-1,5-2と振ってある。また万一救助を呼ぶ際のバーコードまで載っている。(勿論、山中でも通話OK)

見慣れた花が少し咲いているが、最初からなかなかの急登となり、すぐに暑くなって1枚脱ぐ。最初の目印はカル・バウィ。刀岩という意味だ。
カルバウィ石畳の登山路

このすぐ先に分岐があり、私達はロタリ待避所方面に進む。
朝は山頂付近にガスがかかっていたが、もう抜けるような青空で、風もなく、登山には最高の天気だ。大きな岩がごろごろした山で、岩をよじ登る箇所も多い。そんな場所にはロープが張ってあるが、掴むほどではない。今回、手持ちの「韓国100名山」(韓国で購入)、チリサンの登山地図(韓国で購入)共にコースタイムがまちまちで、ネットで体験記を読むと同じコースでも随分と差があって、どれが正しいのか少し不安になる。
しかし、今までの経験と標高差から、朝早くから歩けば必ず日没(17:40頃)までには降りられると確信し、慌てずゆっくり歩くことに決めている。
(なお、登山口のゲートは日の出2時間前〜日没2時間前のみ開くのだが、この山も待避所などに予め出発・到着の制限時間が決まっているようだ。)

そのうちに他の登山者に数回道を譲るようになり、その都度「アンニョンハセヨ」と挨拶を交わすと必ず声をかけてくれる。また「どこから来ましたか」とか「韓国語(ウリマル)がお上手ですね」などと韓国の方はみなとても褒め上手である。
2人連れが多く、団体はいない。何より、欧米人がいないのは初めて。日本人は、韓国人のご主人と一緒に縦走してきた、大阪出身の女性に一人会ったのみ。それに、登っている人たちは今までの山に比べると歩き慣れていてウェアもおしゃれな気がする。

さて、登るにつれて紅葉も進み、写真の枚数も増えていく。ようやく見晴らしの良い開けた地点に出ると、目の前に山頂が見えた。それに、少し先に待避所かお寺も見え、登りも半分を過ぎたかな、とほっとするが、予想以上に時間はかかっている。
ここで男性に写真を撮ってもらうと、「ここからの2時間が大変ですよ」と言われる。ちょっと見はもうすぐという感じなのに。
ロタリ待避所

少し歩くとロタリ待避所[テビソ]に着く。まだ人も多く、ゆっくり下山するのだろうか。ここで大休止。飲み食いして少し荷物を軽くしておく。
ここからの紅葉もまた素晴らしい。目と鼻の先に韓国で最も高い地点にお寺「法界寺[ポ(po)ッケサ]」があり山門が綺麗だが、先を急ぐので参詣はせず。
標高が随分上がったのか、展望が開け、とても気分がよい。しかし、どこまでも続く石の道に、いつ足が悲鳴を上げるかちょっと怖い。
なるほどすぐに大岩を何度もよじ登り、段差のきつい石のルートを息を切らしながら登っていく。これは時間がかかる訳だ。だんだん追い抜く人も増え、立ち休みが増えていく。標柱を写しながら進んでいくと、急登の先に山頂が目に入る。まるで(中央アルプス)千畳敷から見上げた極楽平みたいだ。

つづら折りを頑張っているとどこからか大勢の中学生位の団体が駆けあがってくる。元気だなあ・・・。
私も負けずに登っていくとあっという間に山頂に。写真で見慣れた山頂の石碑は随分と崖に近い場所に建っていて、ちょっと写真が撮りにくい。
急登が続く抜きつ抜かれつした男性2人組山頂直下の平地

それに順番待ちが多いので、2人の到着を待ってすぐに写してもらう。その間にも中学生の団体が、まるでアリのように続々と上がってくる。山頂直下に広場のような場所があり、その片隅でお昼にするが、そこもどんどん埋まっていく。凄い数だ。

私達は念願の登頂を祝し、菓子パンとコーヒーで乾杯。すると脇にいた大人の集団が先生たちだったようで声をかけてくる。時に英語、更に日本語が混ざり、ここでも友好を深める。

さあ、更に荷物も軽くなったので、稜線を進む。が石の上を歩いてきたのでだいぶ足に来ている。この先ひと山(帝釈峰)越えてから下山路に入るのだが、まずは一気に下り、それから少しなだらかに進むとあまり顕著でない帝釈峰が現れた。振り返ると天王峰がもう随分遠く感じる。
帝釈峰から天王峰を振り返るチャントモク待避所

ここまで何度か抜きつ抜かれつの中年男性2人組と前後するうちに1時間ほどでチャントモク待避所へ。ここも人が多い。トイレを借りて、少し休んでいると、これまた顔を覚えた上品な若いご夫婦が周回コースで降りて行くのに出会い、手を振って別れる。

ここからの下山コースもよく歩かれている。というのもソウルからの直行バスがあり、朝ソウルを発てば夕方前にこの待避所に着くからだ。それに、中山里よりもなだらかで歩きやすいコースという言葉も耳にしている。あとは日没前に下山すればよく、のんびり歩けるかと思ったが少し甘かった。

相変わらずの岩場の急降下もあり、落ち葉と小石で気が抜けない。足も疲れているし、滑らぬよう注意しながら段差に気を使って降りると時間がかかる。

なぜか今度は小学生の少人数グループがいくつか駆けてくる。今日は金曜日だというのに、休みなのだろうか。 中学生位の男の子数人組も駆け下りていく。私達が「外国人」と分かったようで、興味津津だ。

ところで、韓国の山ではツキノワグマが絶滅の危機にあり、この智異山で保護活動が行われている結果、熊が出没することになる。所々に熊に出会ったらどうするかという標識があったが、今度は恐ろしい顔をした熊の絵が描かれ、「出没注意」とあるのはちょっと恐ろしい。そうそう、人が多いと思って鈴も持参していない。
時折平坦な道もあるが、登り返しが所々にあり、このコースはとても時間がかかる。追い抜いて行くのはみな男性で、「日本人ですか?ガイドも付けず3人だけですか?」と一様に驚かれる。きっと日本人といえば団体でゾロゾロ歩いているというイメージなのだろう。心の中で、『はいはい、女性3人だけですが、ハングルも読めるし何とか会話も出来てコース地図も持っているので大丈夫ですよ』とつぶやく。

少しずつ日が傾いて行くがなかなか標柱の数字が減らない。ここは10番コースで、番号は11から順に減っていく。10-4の少し先でも休憩するが、降りてくる人もいなくなり、少しさびしくなる。途中で足を引きずるように歩いていた女性単独行の人はどうしただろうか。

紅葉に励まされて降りる白武洞の登山口

4時になった。あと1.5キロ程を頑張って歩く。渓流沿いの静かなコースは黄葉が美しい。でも、熊さん、出てこないでね。
標柱が1番になったと思ったらすぐにキャンプ場に出た。家族連れが遊んでいる。ああ、下山したのだと思うと急にザックが重くなった。

標識に従い歩いて行くと案内所とゲートがあり、白武洞への下山完了。長い1日だった。
さて、バス停はどこだろう。タクシーはいるだろうか。どんどん歩いて行くと駐車場とバス停に出た。バスはどうやらハミャンに行く模様。時刻表も出ているが南原行きはない。バスの運転手によれば、途中で乗り換えれば行けるという。が、客引きっぽいおじさんが登場し、タクシーを呼んでもらうことに。

しばらくしてタクシーがやってきた。南原まで50,000Wという。1時間程度かかるのでこの位が相場であり、 疲れた体で乗り継ぎも大変なので、それに乗り込む。
南原のホテルは確か2軒のみで、出来たての新しいホテルを予約してあったのだが、この運転手が曲者で・・・。

いろいろあったのだが、とにかく予定通り南原に到着、市外バスターミナルで降りてコンビニで明日の朝食を買い、別のタクシーでホテルに無事到着。
小さな町にいは場違いな程、豪華で綺麗なホテル。これからまたタクシーで外出する気力もないので、ホテルのレストランで夕食。
後はオンドルの広い部屋と広いバスルームで疲れを取る。
明日はバスで全州へ。お昼を食べてからソウルに向かい、翌日の夕方、金浦空港から羽田行きに乗って帰国となる。


★智異山(韓国の山)への個人旅行のヒント★
ハルラ山、ソラク山に比べてチリサンはいろいろな面で難易度が少し高いです。ツアーではなく個人で行く場合、最低限ハングルが読め、韓国語で簡単な会話ができることが必要です。 (タクシーの予約、行き先の指示、民宿やモーテルなどではご主人との会話、バスの切符の購入や時刻、ロッカーの使用時などに簡単な韓国語会話が必要です。)
智異山の最高峰が天王峰1915mで、そこへの最短路が私達の辿ったコースになります。中山里から入る場合にはやはり釜山から晋州(チンジュ)に行き、そこから中山里までのバスに乗るか、タクシーになります。タクシーの方が案内所前まで入れるので楽です。

白武洞へはソウルから直行バスが出ています。これは高速バスのサイトから検索もできますが、ハングル表記になります。時間もかかるので、朝一番に乗っても、山頂近くの待避所で1泊になりますので、国立公園のHPからの予約が必要です。(方法は私のブログでソラクサンの例をご参照下さい。)

ソウルからの経路と智異山のコースの概要は、コネストのHPが分かりやすいです。

一旦登山口まで辿りつけば、心配ありません。ただし、入山期間、入山時間、待避所への到着時間などに制限がありますので、十分確認してから計画して下さい。
コース上は日本と違って非常に整備されており、地図も不要なほどです。土の上を歩く個所が殆どなく、石や鉄の階段などが続くのできついです。コースタイムも長いので、それなりに山慣れた方でないと大変でしょう。

地点・地名等と距離は標柱にしっかり記載されています。目安になります。(距離500mごとに標柱が現れます。)

左の側面には、上部に「↑チュンサンニ3.0km」、「↓天王峰2.4km」

右の側面には、赤字でチリ、05-06(第5コースの6番目=登山口から500mx6=3km地点という意味)、標高1359m、緊急時の連絡先などが書かれています。
上部にはバーコードがあり、これを読み取ると緊急時の連絡ができるようです。

英語表記もありますが、ハングル文字を機械的に置き換えたものなので、実際の発音とは大きく異なる箇所があります。 また、ハングルでは特定の文字の組み合わせで音の変化が起こる規則もあり、更には地名だとその例外もあって難しいですね。

ちなみに、標高第一位の山はハンラサンではなくハルラサン、チリサンの登山口の中山里はチュンサンではなくチュンサンになります。同じく、白武洞はペムドンではなくペムドンと読みます。なお、は同じ発音(ペク)なので、文字にも混同があるようです。(武洞の文字もネットで見ました。)
英語表記ではこの発音の法則が無視されているので、余計に混乱しますね。

英語表記を読むときは、語頭の有声音は全て無声音で読んで下さい。(B→P、G→K、 D→T、J→Ch)
例えば料理でも、ルビタンがKではなくGで始まります。チェジュド(済州島)もChejuではなくJejuと表記されます。
でも、韓国の方はとても親切なので、迷っていればきっと助けてくれますよ。

山行中の画像や、今回の旅行の記録はブログでご確認下さい。
何か質問があればメールを下さい(ウサギの画像をクリックして下さい)。
判る範囲でお答えします。

私達もこれで韓国の標高第一位から第三位までを何とか登ったのですが、今後もまた地方の国立公園で、山に登りたいと思っています。韓国の魅力の1つは 地方都市にあるようにも思います。ソウルもとても素晴らしいのですが、観光だけでなく山にも登ると印象も格別です。

雪岳山だけは、また別のコースから行ってみたい気がしますが、どこもロングコースなのでちょっと二の足を踏んでしまいそうです。


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