中央アルプス縦走   2011年7月末

初日:しらび平〜宝剣山荘
2日目:宝剣山荘5:45〜6:05宝剣岳〜6:45三ノ沢分岐7:10〜7:20極楽平〜8:50濁沢大峰〜10:55檜尾岳11:40〜大滝山〜13:35熊沢岳〜東川岳〜16:00木曽殿山荘
3日目:木曽殿山荘5:50〜7:50空木岳8:05〜9:25赤梛岳〜摺鉢窪分岐10:00〜南駒ヶ岳11:10〜13:00仙涯嶺13:20〜越百山15:00〜16:00越百小屋
4日目:越百小屋6:15〜7:33御嶽見晴台〜8:15下のコル8:25〜9:15林道出合(荷物整理)〜10:15登山口駐車場


<キツかった中央縦走>

今回は、本格登山復帰第一号として、iさんリクエストの中央アルプス縦走へ。目的は南駒ヶ岳周辺のお花畑とコマウスユキソウ(駒薄雪草)。
予定が合ったlilyさんと3人で計画、さあ出発という1週間前にYさんからの電話。「今年はどこ行くの?連れってってよ。」
で、急遽4人パーティーとなる。このベテランY氏の参加が後で縦走の成否に大きく影響しようとは・・・。

◆初日◆
夜行は疲れるので避け、7時発のスーパーあずさ1号で出発。昼頃ロープウェイしらび平駅に到着。
余り芳しくない天気が幸いし、心配したロープウェイの待ち時間は無し。すぐに千畳敷へ。
昼食を兼ねて1時間ほど高度順応を図り、それからお花の写真を撮りながらゆっくり歩く。 黒百合は終わりかけだったが千畳敷は見事なお花畑。マイペースで宝剣山荘へ。

千畳敷

ここで、木曽駒ヶ岳未踏のlilyさんをYさんがエスコート、私達はお部屋で一服、明日からの縦走に備えて英気を養う。

時節柄、団体さんが宿泊しており、まあ、賑やかなこと・・・。10年以上前に泊まった時の小屋の印象は悪かったが、今回は良くなった感じ。 ただし、ポットのお湯(500ml)が250円には驚く。

◆2日目◆
4時から団体さんが起きだして大騒ぎ。加えてヘッドランプに煌々と照らされてとても寝てはいられない。諦めて支度をする。
6時前に歩き出すとすぐに鎖場だが、宝剣山頂までは今回で3度目。慣れたものだ。
違いはザックの重さ。これがズッシリ。バランスに注意して慎重に進むが、新しい鎖がガッチリついており、あれ?もう山頂?と言う感じ。

さて、この先が一番危険と思い、気を引き締めて降り始める。
どうなっているのか心配したが、ここも鎖や足場がガッチリ。慎重に降りれば全く問題なし。ただし、長い岩場の下りが連続するので、それなりに要注意。
降り切って振り返るとなかなかの光景。

宝剣岳の下りコマウスユキソウ

ルンルン気分で極楽平まで行くと、団体さんが群れている。聞けば、宝剣山荘から一旦千畳敷に降り、また極楽平へ登り返したのだという。
確かにこの岩場を団体で通過するととんでもない渋滞は必至。登り返してもコースタイムが同じなら、そういう選択になるのかも。
お先に失礼して、先に進むと早速お目当てのコマウスユキソウが咲いている。これは一番小さいウスユキソウだそうで、とてもかわいい。

更には沢山のイワツメクサに交じってクモマキスミレ(雲間黄スミレ)も咲き始め、チシマギキョウも綺麗だ。今日は沢山写せるかな。

雨にたたられた昨年の北ア縦走を思い出し、今回こそは、と大展望を期待するが、時折ガスが湧いてきて、縦走路は見えたり見えなかったり。
復帰後の本格登山としては、ちょっとハードだとは思ったが、確かに水でザックが重い。それに、この足で4日間歩き通せるか、実は非常に不安。
中間点の檜尾岳まで来ると、心身共にかなり疲れ、今日はここまでだったらいいのに、と本気で思う。

ここでまずは昼食休憩。朝食をお弁当にしてもらい、部屋で半分食べた残りがお昼。これで分量的にもちょうど良い。
フリーズドライのスープ類をお湯で戻し、追加すれば十分だ。更に熱いコーヒーを飲み、少し元気を回復。

余裕を持ってコースタイムを組み立てていたのだが、ここまでかなり時間がかかっている。ザックが重いせいかもしれない。中間地点と思うと 何だか疲労度が増してくる。
他の登山者と抜きつ抜かれつしているうちに、今回も雨が降り出し、合羽を着ての行動となる。暑くないのは有難いが、濡れて少しずつ体力を消耗し始める。
どこまで進んだか、疲れで定かではないが、多分、熊沢岳のあたりから「どうして鎖が足場が何もないの!」という手強い岩場が続く。
どうしても腕力に頼らざるを得ない箇所もあって、疲労が蓄積してくる。

縦走路を望む

実は歩き出しに2.4Lも水分を持っており、この時点でも相当残っている。この重さなら大丈夫と思っているうちに、これが体力を奪っていたようだ。 カメラを出せず、メモも濡れてとれないので、正確にどこだったか分からないが、とうとう大きな岩場をよじ登る途中で立ち往生。
はっきりとした足場がなく、最後は靴裏のフリクションと腕力で登りきらなければなければならない。
3人は脇から強引に登り切って先に行ったのに、骨折した足首への負担が怖く、また万一滑ったら、と急に怖くなってしまったのだ。

しばし呆然としていると、先に登った単独行の男性が、見かねて手を貸してくれた。ザックを先に引っ張り上げてくれたのだ。

空身(からみ)になると、あっけなく登れてしまう。そのことでかえってショックを受け、一気に落ち込む。
この親切な男性にお礼を言い、またザックを背負って進むと、3人が座って待っている。 まさかそんなことになっているとは思わず、待ちくたびれたことだろう。
自信喪失で、また同じような垂直の岩場で立ち往生。今度はYさんにザックを引き上げてもらう・・・。 あ〜最低な私・・・。

泣き面に蜂、で雷も聞こえてきた。稜線で隠れる場所もなく、小さな岩峰を越える度に、 小屋はまだ?、雷さん近づかないで!とひたすら念じ、足元だけを見つめて歩く。
先頭を譲ったlilyさんの「小屋が見えました」の声に最後の気力を振り絞って、16:00着。

びしょ濡れでも乾燥室がなく、玄関先に濡れた雨具をつりさげる。部屋にザックを持ちこめず、荷物整理の気力もなし。たった1つのストーブにしがみついて、濡れた靴下を干す・・・。

この小屋では、寝る場所が夕食後に指定されるので、食堂で支度を待つ。
綺麗な小屋だが、また例の団体と一緒で、夕食後はすぐに布団にもぐりこむ。折角の着替えの衣類も出番なし。夜中に雷が鳴っている・・・。

◆3日目◆
今朝も団体さんの大騒ぎで4時前から起こされ、とてもゆっくり寝ていられない。
昨日の不甲斐なさにガックリしつつも、「荷物を全部分けて持つから出して。」とのY氏の指示には抵抗。歩ける自信があるので、ポットをlilyさんに、 水500mlをY氏に預け、1キロ程減量したして難関の空木岳に挑むことにする。
幸い天気はよさそうだ。雲海が美しい。足も大丈夫。今日こそは・・・。

朝一番のきつい登りに気を引き締め、ザレた足元に注意しながらゆっくり歩き続ける。急登の連続で、他の登山者とも抜きつ抜かれつ。
ザラザラした斜面には本当に足をすくわれそうだ。切れ落ちた斜面ではかなりの高度感もあり、意外とコワイ。

やっと山頂か、と思うと2つ先のピークがそれという。途中でブロッケンが見られ、虹の輪が綺麗だ。
山頂の直下には岩と岩のギャップがあり、木曽殿山荘のオヤジさんに「滑る岩があるので要注意」と脅かされて、ちょっとビビる。

女性は左から回り込む方がよい、とのアドバイスに従うが、むしろそちら側のギャップの方が怖い。
逡巡していると、先に越えたYさんが腕を伸ばし、「大丈夫だよ。手を貸して!」と我々を順次引っぱり上げる。
これにはびっくり。年配とはいえ鍛えているだけあって、その筋力には脱帽。
辿りついた絶景の山頂は久しぶりに雲の上。素晴らしい青空と多少の雲に見え隠れする周囲の山。こういう展望も久しぶりだ。

空木岳山頂より

体力勝負の空木を越えると、団体さんを含め、みんな池山尾根から下山らしい。
午後から崩れる予報らしく、小屋のオヤジさんの「できれば団体と一緒に下山した方がいい」という忠告を気にするlilyさん。
実は池山尾根の方が難所が多く、逆に我々の行く縦走路には避難小屋が2か所あるからと説明し、縦走続行。

空木岳を降りると前後に誰もいなくなる。静かだ。本当に静かだ。
コマウスユキソウを始め、白い砂礫地にお花が映える。目の前に見える赤梛岳へは楽々ラバース。ああ、これぞ憧れの「稜線漫歩」。

赤梛岳へ摺鉢窪

山頂からはこの先のカールのかなり下に摺鉢窪(すりばちくぼ)避難小屋が小さい。鞍部の分岐まで来て、ザックを置いて少し降りてみる。

縦走路随一のお花畑だそうで、シナノキンバイ、コバイケイソウ、クルマユリ、オウレン、ハクサンイチゲなどが斜面を埋めている。
しかし、眩しい程の日差しかと思えば急にガスが立ち込めて、何とも忙しいお天気だ。
お花を堪能後は分岐に戻り、目の前に聳え立つ南駒ヶ岳を目指す。

山頂からの大展望を期待するが、何と山頂はガスの中。がっかりしつつ、大休止していると、単独の男性が登ってくる。
聞けば駒峰避難小屋の小屋番の「見習い」をなさるそうで、この周辺の詳しい情報には、Y氏も地図を広げ、話が尽きない。
これからまた小屋に戻るとのことで、我々は次の難所(らしき)仙涯嶺(せんがいれい)に向かう。

この頃には私も自信を回復、荷物が軽くなったこともあり、快調に歩いて行く。日向山(山梨)を思わせる花崗岩の白さだ。
相変わらずコマウスユキソウやイワギキョウ、チシマギキョウ、そして咲き終わったイワウメやチョウノスケソウの大群落。
ハクサンシャクナゲも綺麗な縦走路は、ハイマツの中をかき分けながら進む。ペンキはだいぶ色褪せているが、ほぼ稜線通しに行けば大丈夫

仙涯嶺の形のよい三角形が見えてくると、周囲の斜面はお花畑。ここで初めてハクサンフウロを見る。
花に見とれていると、突然賑やかな声が。向こうからグループがやってくる。今日初めてのすれ違い。

さて、仙涯嶺の鎖場には要注意と聞いているが、その鎖場は拍子抜けするような感じ。直後の2か所の鎖場の登りと合わせても、 気象条件が悪くなければ問題なし。 ただし、躓いて落ちたら命の無い、絶壁を辿るルートが続くので、ご用心。

仙涯嶺鎖場その1

なるほど、空木から先は、更に緊張する箇所が連続し、鎖の無い個所が殆どだが、そのうちにスリルに慣れてくるところがまたコワイ。
そんなことを感じる余裕も出てきて、長い1日も終盤に入るとここでまた急に雨が落ちてくる。
さっき折角着干ししたのに、と文句を言いつつ、合羽を着て最後の越百山を目指す。目の前に小さな双児峰が見えるがすぐにガスに隠れてしまう。

越百山

これを越えれば尾根を下り、越百小屋。そう思うとほっとするが、最初のピークには倒れた道標と石柱しかない。
これが山頂?と訝りながら更に進むと、今度ははっきりした標識が現れ、越百小屋の標識に導かれて樹林帯へ急降下。
雨の中滑る足元に気をつけながらどんどん降りて行く。今日も行動時間は9時間を超えている。

樹林帯に入ってもなかなか小屋が見えない。濡れて滑る木の根に難儀し、覆いかぶさる枝を払いながら、まだかまだかと下っていると、 突然「ヤッホー!」と声がする。
ああ、小屋は近いぞとホッとするが、また呼び声がするのでヤッホーと返事をすると、声は止まった。

声が近い割になかなか見えなかった小屋も、足元が平らになって、やっと見えて来る。
今日も最後は雨になったが、体調もよく、大満足。声を掛けると小屋番さんがひょいと出てくる。

HPではヒゲ面だったが、今はつるつる。手作り感の溢れる小さな小屋だが、良く見ると手入れも行き届いたセンスのよい小屋だと分かる
一人で何でも切り盛りする小屋番さんはテキパキと指示を出し、とても親切だ。
荷物を別棟に置き、貴重品だけ持って母屋に入ると、小ぢんまりした綺麗な食堂になっている。 今日は他に5人組の予定というが、我々も4時到着で遅いが、彼らは夕食時を過ぎてもまだ連絡がなく、来る気配もない。
どうやら先ほどの「ヤッホー」は、我々を心配して声をかけたらしい。

さて、5時の夕食は、心づくしの夕食が並ぶ。野菜と桜エビの天ぷらに驚き、更にご飯がとてもおいしい。
そういえば、食器はすべて瀬戸物(陶器)で、これは山小屋では大変な贅沢。こんにゃくの炒り煮も絶品で、またたく間にお皿が空になっていく。

結局食べ終わっても5人組みは到着せず、私達の貸し切りに。ストーブで濡れた靴下を乾かしながら、贅沢な時間を過ごす。
本当は7時消灯というのに、話しこんで延びても嫌な顔一つせず、お人柄がにじみ出る対応だ。

そろそろ切り上げ、寝る場所へ案内してもらう。母屋のちょうど裏側になるのだろうか、ちょっと暗い部屋に布団類と冬用のシュラフが置いてある。
それにくるまって寝るのだが、足元と、外のトイレまで、数か所に可愛い明かりを点々と置いてくれる。行き届いた配慮に驚くばかり。

◆4日目◆
真夜中の地震に思わず身構えたものの、大した揺れにならずほっとする。朝食5時に合わせ、目覚ましをかけて起床。
どうやら外は霧雨のようだが、何とか傘なしで母屋へ入りお膳につく。朝食がまたセンスのよい盛り付けで、びっくり。
勿論お味もすばらしく、とろろにも感動。さらに食後はコーヒーまで!

ミルでゴリゴリと豆を轢き、カップもお湯で温めて、おいしい水で作った本格コーヒーが本格派。しきりに謙遜されるが、この味は素晴らしい。
だからこの小屋はリピーターが多いのだろう。また泊まりたいと思わせる魅力たっぷり。

ゆっくりしたいが乗り継ぎの時刻もあり、予約してもらったタクシーに合わせて6時過ぎには出発。4時間もあれば大丈夫、とのことだったが、念のため早く出る。
歩き出すとオサバグサの葉や、イワカガミ、オウレンなどがびっしり。それぞれの花の時期には素晴らしかったに違いない。
さて、この縦走、登りはロープウェイだが、下山はそうはいかない。山道3時間+林道1時間は、縦走の最終日としては楽ではない。
何より閉口したのは虫。Sさんから頂いたハッカ油で撃退を図るが、とうとう耳をさされ、腫れてきた。

下のコル

それでも遥かな沢音が轟音に変わると、堰堤が見えてあっという間に花が増え、林道出合。ゆっくり歩いたが、確かに3時間。
ホタルブクロ、クガイソウ、クサボタン、と最後まで楽しませる。標識を確認し、広い林道を歩き始めるが、折角なのでここで荷物整理をして、下山後のお風呂に備える。
ノンビリ整理をして用意が整ったところでまた出発。この時間を入れても1時間で登山口へ。広い駐車場にポツンと車が2,3台。
予約の時間まで相当あるなと思ったら、随分早くタクシー来る。これに乗って須原に向かう。

JRは何と2時間に1本しかない。お風呂も車なら野尻駅そばの施設が広くて良いらしいが、我々はそうもいかず。あれこれ調べ、地元のコミュニティバスを調べ上げ、これを利用して木曽福島へ。
ところが、駅前の利用予定の旅館では立ち寄り入浴が出来ず、街中を歩いて旅館「いわや」まで足を運ぶ。入浴は600円也。
13時からなので少し待ち、ようやく4階のお風呂へ。檜の湯ぶねと露天風呂に大満足。膝の紫のあざに驚きつつ、4日間の山行を締めくくる。
時間が無くなって、お昼のそばは諦め、福島宿の「上の段」を通って駅に戻り、14:25の特急「しなの」と「あずさ」を塩尻で乗り継ぎ、夕方都内に戻る。

その他の画像はブログでどうぞ。(風景、食事、花に分かれています。)

*参考資料*
越百小屋からタクシー予約OK、登山口から須原駅まで30分弱、料金は5000円弱。
須原駅10:50発の次は12:43発
10:50に乗るにはタクシーを予約し、小屋を4時間前に出ること。

コミュニティバス利用の場合:
大桑村「くわちゃんバス」●須原駅11:32→バス回転場所 11:37着(400円)
上松町コミュニティバス「ひのき号」へ乗り換え→●木曽福島駅 12:21着。
*大桑村、上松町HPで確認のこと。

「ひのき号」は「池の尻」始発。バスの転回場所は、須原からすぐの発電所、サークルK,そば「玄」のある木曽ドライブイン至近。ここまで「くわちゃんバス」に乗るか、我々のように タクシーにここまで乗せてもらう。(5100円でした。)
ここから進行方向、信号機手前左側に立派なバス停「池の尻」あり。木曽福島まで400円。

バス停池の尻


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