">アポイ岳   2022年5月9日

コース:
VC駐車場7:25〜9:09五合目9:18〜10:10馬の背〜10:23旧幌満分岐〜10:55旧幌満お花畑〜11:35山頂12:00〜12:56分岐〜13:40五合目13:56〜15:20VC

前日、飛行機で北海道入り。新千歳からレンタカー。順調だったことと、宿の都合で5時以降のチェックインということで、思い切って襟裳岬まで。
遮るもののない突端は風速20mはあろうという暴風。寒さと強風で引き返したくなるところを我慢して、「何もない襟裳の春」を体感。
引き返して登山口のあるアポイ山荘への分岐を確認しながら浦河の宿に泊まる。
翌朝、強風と低温の予報は変わらず、覚悟を決めてビジターセンターに向かう。平日とはいえ先行者はいるようだ。アポイ山荘から徒歩の登山者もいるだろう。北海道の場合はヒグマが何より怖いので、その点安心だ。

固有種が多く、花が素晴らし山ということで、期待が高まる。確かに気温は低く、まだ風はたいして感じないものの、用心して東京の12月頃の支度で歩き出す。

大きな標識が沢山あって迷うこともなく、登山口に着く。途中は鳥も鳴いていて、気持ちがいい。
小さな沢で設置のブラシを使って靴底を洗い、種子の持ち込みを防ぐ。

ふと目をやるとピンクの花が。あ、オオエゾサクラソウ!


あれ、もうタカネフイリスミレも。


沢を渡って少し歩いただけでそこは何とオオエゾサクラソウの花園。それがどこまでも、どこまでも続くのであった・・・。


(ヒメイチゲも沢山咲いていて、これは上部の岩稜帯以外にはずっと咲いていた。)
とにかく花が目的なのでゆっくりゆっくり。何度でもレンズを向け、スマホで写し、楽しむ。途中随所にベンチのある休憩所が設けられ、地元で大切に保守整備されていることが分かる。

どこまでも続くお花ながら、撮影もひと段落して少しペースが上がり、五合目の避難小屋に着くころには体も温まった。
ここには簡易トイレを利用するためのミニテントが2か所設置されている。勿論、我々も簡易トイレは持参している。

ここからは一気に樹林帯を抜けて、山頂方面が見はらせるが、早速の岩礫地帯になり、一気に登りとなる。
が、すぐに菫が目に飛び込んでくる。艶のある葉、濃い色で側弁に毛がめだつ。これがアポイタチツボスミレか!

そして、可憐なアポイアズマギクも岩の合間の僅かな土に根を下ろし、3センチほどの花を健気に咲かせている。


5合目を境に咲く花がはっきりと棲み分けられている感じ。この先の岩場はずっとこれらの花が続く。少し進むと可憐な花を沢山つけたサマニユキワリも現れ、嬉しい悲鳴を上げる私たち。

馬の背までは中々の登りが続くが、だんだん風が強くなってきて、時折山頂はガスがかかるがそれも物凄い速度で流れていく。
う〜ん、これは相当な風速だなあ。やっぱり予報通り、20m近い風が吹いているようだ。

ゆっくりしたい気持ちを押さえ、吹き曝しかもしれない馬の背を早く通過すべく、少しペースアップ。岩場に手を掛けながら登っていくと今度は濃いピンクのヒダカイワザクラがお出迎え。

これは流石に素通りできず、ささっと写して先を急ぐ。

幸い馬の背は風を避けるようなルートになっており、何とか分岐まで辿りつく。
西からの暴風は更に強まる予報のため、樹林帯になっており、強風を追い風で登ることが出来るよう、旧幌満尾花畑へのコースを選ぶ。

樹林帯に入ると思ったより道は細く狭い。富士山のお中道と似た雰囲気。植生も変わり、また沢山のヒメイチゲやオオエゾサクラソウ、フイリミヤマスミレなどが咲いている。
そんな中、少しずつ視界が開けてきて、ダケカンバ(見た目はシラカバ)の明るい林を抜けると一気に遮るもののない暴風地帯に突入!

身体が持っていかれそうな『爆風』が容赦なく吹き付ける。合羽を着ようとするが、手を離したら一瞬で彼方に飛ばされてしまうので、しっかり押さえつつ、必死にはおる。
風は冷たく、手袋をしている指先も冷たくなる。ここでルートは山頂に向かってV字に折れている。
この爆風(体感秒速20m)の中、登頂できるのか。

フードを押さえながら見上げると、すぐにダケカンバ帯に入り、その上は樹林のようだ。一瞬迷うが、行けると判断し、登り始める。

幸いすぐに足元は風が遮られ、一息で樹林に入って暴風はかなりよけられるようになる。
あおられてバランスを崩さぬよう慎重に足を運びながら山頂を目指す。中々に辛い登りを頑張ると、ガスが切れて時折山頂が見えてるが、意外と遠いなあ〜。

もう一息、と気合を入れて登り切って何とか山頂。先行者が数人。ここは少し木があるので風も少し遮ってくれる。

好天なら吉田岳方面に足を延ばす予定だったが、この強風ではとんでもない。山頂で休憩する人も、「あっちも凄い風だから引き返してきた」という。
ここでお昼にして、やっと腰を下ろして大休止。無事登頂できたことを感謝。

下山はメインルートを選び、まっすぐに降りていく。
ここも相当な岩稜帯で、何と言っても滑るカンラン岩。風も相変わらず吹き付けるので、慎重なうえにも慎重に。

少し降りると黄色い花が目に飛び込む。あ、エゾキスミレだ!



コース上には少ないものの、間近で見られるの株もあり、夢中にレンズを向ける。これで、見たい花はほぼ全てクリア。
馬の背までは延々と続く岩場だが、ここでもヒダカイワザクラが随所に見られ、またミニミニサイズのサマニユキワリがこれでもか、というほど咲いている。わ〜天国だ!

眼下には海も広がり、最高の景色だ。風さえなければ(笑)。

5合目まで降りればもう安心。ここで一休み。簡易トイレを使ってみる。私が入った方は中が暗かったが、山友の方は明るかったという。いずれも入り口近くに札が掛けてあり、裏返して「使用中」とすれば安心。

カンラン岩とサヨナラして、また樹林帯へ。
もう一度お花を確認しながら歩きやすい道を登山口へ向かう。今日はあと何か見たい花は?ということで思い浮かんだのがオクエゾサイシン。地味な花だ。


すると、登山口近くなってから数か所で葉を確認。しかし花はない。・・・諦めかけた時、山友が見つけてくれた。これまた小さな地味な花。でも、会えて嬉しい。

最後はビジターセンターで、栽培しているヒダカソウを見せてもらえると聞き立ち寄るが、運悪く担当の方が不在で、見ることはできず。
北大の植物園で見ることにして、今日の宿、アポイ山荘に向かう。

雨こそ降らなかったが、初めてに近い暴風の中、固有種も沢山見られて大満足の山旅となった。
しかし、暴風に滑るカンラン岩、更に撮影で立ったり座ったりの繰り返しでかなり体力を消耗。2座登った位の疲労感。いや、心地よい疲労感というべきか。
補足:
アポイ山荘は2食付きだと15000円と高いので前泊は浦河へ。また、我々は朝食のみつけて8900円。レストランで各自払いで食べられるのでこの方式もお薦め。
なお、朝食はBOXランチ方式で、朝4時から頼めるという。紙パックのジュースと、サンドイッチ(ハムサンドと卵サンド)。パンは少しパサつくので、山に持っていくのはどうだろうか。

帰路はドライブ。海岸沿いでは有名な日高昆布を干す作業があちこちで見らた。道の駅「三石」では、手ごろな昆布がたくさん。お土産にも喜ばれそうだ。

しかし、北海道は運転にも気を遣った。事故なく戻れて何より。

他の画像はブログでどうぞ。

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