発明の分析(発明に関する情報を入手し、明細書の様式に従って分析する)
発明を前記明細書に著すについては、発明に関する情報を分析し、明細書の形式に合わせてどのように表現するかを検討しなければなりません。
発明に関する情報とは、@発明自体の技術内容のみならず、A先行技術が何かということも含まれ、さらにはB発明の応用範囲についての情報も必要となる場合があります。
<静的分析>
(a)「目的」「構成」「作用・効果」の項目を有する1枚の紙を用意する。
(b)用意した用紙の各項目に発明者が認識している発明をありのままに記載する。
発明者が認識している技術は発明の一実施例である。
@目的の欄:発明者が認識している目的を記載
開発テーマ、従来の問題点
A構成の欄:その目的を達成するための具体的にどのようなことをしたか現実に完成した装置や物を構成要素毎に箇条書する。
現実に行った方法をその手順に従って箇条書にする。
☆ソフトウェアの場合、動作手順を順次説明する。フローチャート図、タイミングチャート図で示すとよい。
B効果の欄:どのような効果が得られたのかを記載する
<動的分析>
各項目に記載した事項を客観的に眺め、発明の抽出、分析、明細書作成のための補充データの必要性、新たな開発テーマの抽出などを行う。
@各構成要素に着目
★各構成要素が発明の効果を奏するためにどのような機能・作用を有しているのかを検討する。
☆ソフトウェアの場合、静的分析で示したフローチャト等から、機能ごとに「機能ブロック図」を作成してみる。
Aその機能と同一の機能・作用をする他の代替構成はあるのかを検討する。
★正面からの分析、作用・効果からのフィードバックによる分析
★その代替構成と元の構成とを併せた上位概念の構成が本来の発明の構成要素である。
☆機能ブロック図を見ながら、その機能の上位概念があるか否かの検討
☆目的達成する上で不要な機能ブロックがあるか?→不要なものは必須構成要件ではない。
B必要データの補充
★各構成要素の作用・効果を裏付けるに足る、すなわち、当該構成が発明を構成するであろうとの証明となる必要データがあるか否かを検討する(実施例の補充)。
C構成要素の機能・作用から別の効果がないかを検討
★別の効果があれば目的自体変更となる場合あり。
D構成要素の機能・作用から本発明と異なる概念の別の開発テーマを見いだせ るか検討
E従来例を考慮して、発明の必須構成要素の限定を行う。
★物、方法、装置、用途、部品等の各種発明を考える。
以上の分析結果で得られたデータを明細書の各項目に振り分け説明する。
静的分析
「目的」「構成」「作用・効果」の項目を有する1枚の紙を用意する。
対象となる特許明細書から
@目的に相当する記載
A構成に相当する記載=請求項記載の構成
B作用・効果の記載
を抽出し、用意した用紙の各項目に振り分けて記載する。
動的分析
@各構成要素に着目=各構成要素が発明の効果を奏するためにどのような機能・作用を有しているのかを検討する。
★その際、特許発明の本質的効果を奏するために、請求項記載の構成がすべて必要かどうかを検討する。
例えば、「A,B,C,Dからなる装置。」という請求項で、構成要素「C」が本来は不要であるとすると、「A,B,Dからなる装置」は、前記特許発明と同等な効果を得られかつ、前記特許権を侵害しないこととなる。
★その機能と同一の機能・作用をする他の代替構成であって、当該明細書に記載されていないものはないかを検討する。作用・効果からのフィードバックによる分析で検討。
例えば、「A,B,C,Dからなる装置。」という請求項で、構成要素「C」と同一機能であるが、「C」とは技術的概念において並列関係にある構成要素「E」が発見されたとする。すると、「A,B,E,Dからなる装置。」は、前記特許権の侵害ではなくなる。
ここで注意してほしいことは、例えば、特許明細書に前記「C」の具体的例示として、c1,c2,c3が例示されており、これらと技術的に並列レベルにある、同一機能の「c4」が明細書中に記載されていない場合の取扱いである。
この「c4」は、c1,c2,c3とは技術的に並列関係にあるが、「C」の下位概念であることには変わりはない。従って、「A,B,c4,Dからなる装置。」は、「A,B,C,Dからなる装置。」の技術的範囲に属するもので、特許権の侵害となる。
このように、同一機能の代替構成を単に探し出せばよいというものではないことに注意されたい。
Aある技術に関連した特許が複数存在するかを確認
ある技術に関連して複数の発明が特許出願されているのが通常である。
そこで、複数の発明を前記手法で分析し、その構成を並べてみる。
A出願の ○○装置。→構成は A,B,C,D
B出願の ○○装置。→構成は A,B,E,D
ここで、構成を分解し、再度他の組み合わせ、例えば、A,B,C,Eの組み合わせで同一効果の装置が完成するかを確認してみる。
前記A出願とB出願の出願人がどうしてA,B,C,Eからなる発明を出願しなかったのかを考えると、
(イ)この組み合わせも試作したが、同一効果なし
(ロ)何らかの理由で技術的不利益伴う
(ハ)発明者の見落とし等による出願もれ
等の場合が推定されます。
この場合、理由が(イ)であれば、やむを得ませんが、(ロ)の場合であればその技術的不利益を克服すれば、新発明を開発でき、(ハ)の場合であれば、それこそ、棚からぼた餅です。
以上の分析により、他社の特許発明を、その権利侵害をせずに、自社の技術発展の材料として利用できます。
この分析は、他社技術のパテントマップを併用することで、より戦略的となるでしょう。
参考