「春の高瀬舟」

単行本 文庫


花の雨
定廻り同心吉井伝兵衛はそろそろ倅に職を譲る年であった。しかし息子の喜一郎は麻布の岡場所に入り浸りで、伝兵衛も愛想をつかしていた。
春の高瀬舟
小網町の米屋古河屋の大旦那市太郎が古河に行った帰り行き方知れずになった。三日後市太郎の死体が利根川沿いの水田の近くで発見された。宗太郎には市太郎が誤って川に落ちて死んだとは思われなかった。
日暮里の殺人
かわせみに滞在していた川崎の庄屋森川徳兵衛が日暮里の寺で殺された。徳兵衛はたいへんな世話好きで、村の男女の縁談をまとめるのが楽しみであった。
伝通院の僧
長助の知り合いの蕎麦屋に小石川伝通院の僧が足繁く蕎麦を食べにやってくる。柳橋の芸者きく江は妹分のお染に熱湯を浴びせようとして自分がかぶってしまった。
二軒茶屋の女
富岡八幡の境内に松本、伊勢屋という二軒の茶屋があった。天保の改革の際、二軒とも廃業したが、松本は華々しく再開していた。その松本で開かれた展示会の売り上げ三百両余りが紛失した。
名月や
長助が肩入れしている庄吉は江戸でも指折りの料理屋平清の息子であった。先代が外に作った子で、養子先で苦労しこれから菓子の行商で食べていくという。
紅葉散る
東吾は宗太郎と香苗の共をして御殿山の旗本滝川大蔵の古希の祝いに出かけた。そこで侍が女を追って斬りつけているのに出くわした。女はなんと清水琴江であった。だが一緒にいたはずの麻太郎がいない・・
金波楼の姉妹
るいはお千絵と一緒に今は出家して和光尼となった五井和代の琴の催しに招かれた。その和光尼の琴の弟子に評判の料理屋金波楼の娘達がいた。主人庄右衛門はすでに隠居していたが、後妻のおせんに店を乗っ取られたと言う。


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