「源太郎の初恋」

単行本 文庫


虹のおもかげ
東吾は早朝、方月館からの帰り道で蝉取りの少年と出会った。別れた後も何故かその少年のことが心に残っていた東吾だったが・・不思議な縁だが、その子こそ東吾が我が子では思う麻太郎だった。
笹舟流し
長助が築地の本願寺で「かわせみ」を知らないかと聞いてきた女を連れてきた。だがその女は自分の名前も、どこから来たのかも思い出せなかった。とうとうるいに子供が出来たが、はっきりするまではと東吾に内緒にしていた。
迷子の鶏
ある日、気がついたらかわせみの庭に鶏がやってきていた。るいが妊ってから殺生をしないお吉はせっせと餌をやって大事にしている。ちょうどその頃、豊島村から下日暮里のあたりでお寺の釣鐘が頻繁に盗まれていた。
月夜の雁
宗太郎が薬草を育てて貰っている百姓の娘お卯は唐墨を扱う対山軒で働いていた。対山軒の娘は養女だが、入り婿の善右衛門が毒を盛られて死んだ。
狸穴坂の医者
その年の江戸は冬の初めから火事が相次いでいた。そして麻布一帯にも大火があった。狸穴坂に火傷の名医と言われる医者小野寺十兵衛がいた。
冬の海
この頃のるいはお吉を供に鉄砲洲の湊稲荷くらいまで散歩するのを日課にしていた。そんな時お吉は巾着を落としておとくという女に拾って貰った。
源太郎の初恋
源三郎の息子の源太郎は7歳になって急に背ものび、面差しも男らしくなってきた。新年に源太郎が花世に会ったとき、花世は歯痛でおとなしくしていた。源太郎は花世を歯痛に霊験あらたかだという日比谷稲荷に連れていった。
立春大吉
立春の日の朝、東吾とるいの子が誕生した。東吾によく似た女の子であった。通之進は「千度も幸せな春を迎えられるように」と願って千春と命名した。



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