1999年立山黒部アルペンルート旅行記・1日目

9月30日


 今回は「立山黒部アルペンきっぷ」という企画切符を用いたので,指定席利用でいつもの自由席旅行と違い,座席の心配はない.自宅を8時前に出発し,新大阪駅へ向かう.乗るのは新大阪9:17発ひかり100号で,今では珍しくなった食堂車付きのグランドひかりである.そして名古屋で乗り継ぐ列車は大阪始発のしなの15号であるが,新大阪に私が到着したときはまだしなの15号は発車していなかった.なんのため新幹線を利用しているかはわからないが,まあよしとしよう.ちなみにしなの15号の新大阪発の時刻は9:02である.新幹線乗り場へ行くと鉄道ファンがこだま号にカメラを向けていた.食堂車付きの100系だったためもうすぐ東海道新幹線からなくなるとの噂があるためかと思っていたら,よく見てみると国鉄時代に登場した窓の小さい初期の100系だった.そうこうしていると私の乗るグランドひかりが到着した.側面の表示器がLED式など他の100系とは若干違った.名古屋までの乗車時間は1時間とわずかだったため,食堂車等へも行かずじっとしていた.名古屋での乗り換え時間は40分と余裕があるため,最近登場した313系電車をじっと観察する.駅弁「味噌カツ弁当」を購入し,しなの号の車内に入る.大阪始発のため車内はかなりうまっており,名古屋からの乗客でほぼすべての座席がうまった.私の隣の席にもすでにおばちゃんが座っていた.しなの号はワイドビューと呼ばれる新型振子式車両が使用されており快適で速い.名古屋から松本まではわずか2時間である.途中,景勝地・寝覚ノ床を通るのが見所である.
国宝・松本城
▲国宝・松本城
 さて,今日は松本市内を観光することにする.松本は何度か通ったことがあるが,降りて観光をしたことは今までにはなかった.とりあえず国宝の松本城を目指すことにする.まず余分な荷物をコインロッカーに預けることにするが,私が荷物を放り込んだコインロッカーは変わっていた.お金を投入してもお金が戻ってきて受け付けてくれない.先に鍵を閉めてからお金を挿入するのかと思い,鍵を回すと鍵がかかって鍵が抜けた.確かに鍵がかかっているが,お金は挿入していない.不安になりもう一度鍵を突っ込んで回すとロッカーの扉を開けることができた.ということは,...お金を入れずに鍵の開け閉めができるということだ.300円得した!ということで無料コインロッカーに荷物を預け,松本城へ向かう.松本城へは約10分で到着した.なるほど外観も国宝にふさわしく美しい.まず天守閣に登るべく,520円の入城券を購入し城内へ入る.平城ということで城内からの眺めは大したことはなかったが,矢狭間や鉄砲狭間や石落しといった防衛上の工夫がされていたのは興味深かった.また城内の階段は一段が狭く段差が大きくしかも滑りやすいので非常に登りにくかった.これも防衛のためだという.次に,すぐ横にあった日本民族博物館に入場した.というのは,松本城のチケットと共通券になっていたためだが,これがまったくつまらないものであり,入って損したと思うほどだった.
旧開智学校
▲旧開智学校
 次に松本城からさらに北へ少し歩いて重要文化財に指定されている旧開智学校へ向かう.途中に開智小学校があったが旧校を意識したのかしゃれたきれいな建物だった.旧開智学校は松本城からそんなに遠くはなかった.洋風と和風の入り混じった文明開化を象徴する擬洋風建築の代表的建築物ということで,重要文化財に指定されている.確かに外観の構えは一種独特で美しい.建物内には,日本の学校教育の資料が明治から現代に至るまで展示されており,興味深かった.
 さて帰りはバスで帰ろうと最寄りのバス停へと向かう.幸いにも次のバスまでは7分くらいだったので待つことにする.待ち時間を使って,バス停のすぐ目の前にあったローソンでアイスクリームを購入して食べる.バスはほどなくしてやってきた.行き先はバスターミナルだったのでどこで降りれば駅に近いのかと思っていたら,そんなに時間がかからず,駅前に停まって“ここがバスターミナルで終点”ということで下車したが,どうみてもバスターミナルではなくただの駅前のバス停だった.
 無料コインロッカーから荷物を取り出し,松本発16:04の大糸線信濃大町行き普通列車に乗る.新型のE127系ではなく古い115系であった.発車までまだ相当時間があるのにもう車内の座席はかなり埋まっており,トイレの前のボックス席しか空席を見つけられなかったのでここに腰掛ける.発車間際になると立客でかなり混雑してきて,トイレの前の通路には女子高生が床にべっとりと座り込んでしまった.大糸線は元私鉄の線路なのかやたらと駅間距離が短い.松本〜信濃大町間35kmに中間駅が18もある.この区間,普通列車は1時間も要する.大糸線は車窓から北アルプスの山々が見えるため景色がいいはずであるが,今日は曇っていて全く北アルプス連峰が見えない.女子高生の座り込みとトイレの前で居心地が悪く,そして景色も全くダメということで退屈で辛い1時間だった.信濃大町駅へ到着し,まず予約しておいた駅前のホテルにチェックインする.
 ホテルは前日予約したもので,シングルが満室(企業の内定式があるため?)でやむなくダブルルームのシングルユースとした.比較的安かったのだが設備は最悪で,なんとなく不潔で,さらにテレビはコインを入れないと見られないものだった.とりあえず駅前の商店街に出て夕食をとることにする.旅行ガイドブックに載っていた『昭和軒』というソースかつが名物の店に入る.その店で人気メニューというかつ丼を注文した.テレビでは東海村での放射能漏れ事故を伝えており驚いた.この店のかつ丼は通常の卵が乗ったものとは違って,特製ソースとキャベツをかけたものであるが,これがうまい!こんなうまいかつ丼の食べ方があったとは...ホテルに戻り風呂に入るが部屋に付いている浴室はあまりにもせまいので,展望風呂と呼ばれるホテルの大衆浴場の方に入ることにする.展望風呂とは名ばかりで(昼間で晴れていればアルプスの山々が見えるのかもしれないが),3人が入れば満員になるという小さな風呂だった.明日の予定を立て,準備をして寝ることとする.コインを入れてまでテレビを見ようという気が起こらなかったし.明日晴れますように...

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