睡眠時無呼吸症候群についてご存知の方も多いと思いますが、簡単に説明させていただきます。
はじめに
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の本邦における有病率は1〜2%であり、欧米では2〜4%と報告されています。
つまり約200万人にも及ぶ日本人が睡眠時無呼吸症候群(SAS)の患者であると推測されているわけです。
以前は、日本人は肥満になりやすい欧米人に比べ比較的SASが少ないと考えられていましたが、最近では日本人にも同様に多いことがわかってきました。
これは欧米型への食生活の変化とともにアジア人特有の小さな下顎、大きな舌、平らな顔という骨格上の特徴も影響しているようであります。
このため上を向いて寝ると、容易に舌が喉に落ち込んで上気道を閉塞し呼吸がとまりやすくなります。
肥満は無呼吸の大きな要因となりますが、日本人のSAS患者の3割は肥満ではないといわれています。
本邦においては、まだ病気に対する認識が浅く“仕事中に居眠りする怠け者”のように捉えられがちであるのが実情です。
SASは適切な診断と治療を行えば健康な日常生活をおくれることがわかっていますのでこの病気の存在を認識し、理解し、適切な検査と治療を受けることが大切だと思います。
SASの定義
日中の耐え難い眠気があり、下記のいずれかを満たすもの
1) 7時間の睡眠中に10秒以上続く無呼吸が30回以上認められるもの
2) 睡眠1時間あたりの無呼吸数(apnea index: AI)が5回以上認められるもの
3) 睡眠1時間あたりの無呼吸または低呼吸数(apnea-hypopnea index: AHI)が10回以上のもの
検査法
1)スクリーニング検査
(1) 動脈血酸素飽和度検査
(2) 指尖血流量測定
(3) レスピトレース
(4) 簡易睡眠呼吸検出装置(アプノモニタ)
2)ポータブル睡眠時呼吸障害モニタ
現在最も広く普及していますが、呼吸や酸素飽和度、血流などを測定するものの、脳波などによる睡眠の状態を評価しないという欠点があります。つまり、極端な話がわざと息を止めてしまった場合でも、無呼吸と判断されてします可能性があるということです。
3)ポリソムノグラフィ(PSG)
睡眠状態や睡眠段階(脳波で判断)、呼吸循環動態(血流や酸素飽和度、胸やおなかの動き、いびきの音)など、様々な生理機能を総合的に測定する検査法で現時点ではもっとも信頼性が高く、ガイドラインでも推奨されているものです。
4)閉塞部位の診断法
(1) 経鼻的内視鏡下薬物睡眠検査
(2) 上気道CT,MRI検査
(3) セファロメトリ
(4) 多点同時圧測定法
上記でお分かりと思いますが、3)PSG検査がもっとも信頼性が高いのですが、入院が必要となりますのでその前段階やスクリーニング検査としての2)ポータブル睡眠時呼吸障害モニタ(簡易PSGとも呼ばれます)を当院でも行うことが可能です。
その結果によっては、更なる検査(3)のPSG検査)が必要な場合は適切な病院を紹介させていただきますし、簡易検査の結果で治療を開始することもあります。
附)Epworth sleeping scale
(ESS)
以下の各項目についてそれぞれ0 - 3点で自己採点しその合計点が10点以下の場合は正常、16点以上の場合は重症と判定されます。この点数も参考とします。
1.座って読書をしている時
2.テレビを見ている時
3.公の場所で座って何もしない時
4.1時間続けて車に乗せてもらっている時
5.状況が許せば午後横になって休息する時
6.座って誰かと話をしている時
7.昼食後静かに座っている時(酒は飲まず)
8.車中で交通渋滞で2〜3分止まっている時
0:決して眠くならない,1:稀に眠くなる,2:1と3の中間,3:眠くなることが多い
治療法
OSASでは、軟口蓋や舌の筋緊張の低下に伴って気道を塞ぐことや、鼻閉の為に開口せざるを得なくなりす。
その結果、舌根部が下がり、やはり気道を塞ぐので、これを広げることで無呼吸が改善されます。
そのため閉塞部位によって様々な治療法があります。
耳鼻咽喉科の立場からでは主に外科的なアプローチとなる場合があります。
つまり手術的にこれらの閉塞を解消することになりますが、
1)手術自体でOSASの改善が望めるもの
2)手術自体でOSASの軽症化が図れ、他の治療との併用で改善が望めるもの
3)経鼻持続陽圧呼吸療法(nCPAP)や口腔内装置のサポートとして必要なもの
に分かれます。
また、手術適応とならない場合でAHIが20以上の方はnCPAPを導入します。
さらに、肥満が関連すると思われるものでは食事療法や運動療法などによる減量もあわせて行います。
手術が必要と考えられる方には、やはり適切な病院を紹介させていただきます。
また、nCPAPの適応となる方は当院での加療が可能です。
口腔内装置については歯科にご紹介いたします。
OSASを疑ったり、PSG検査などを希望される方は、一度、受診していただければ幸いです。