先日、シンポジウム「論争・地球温暖化」というものを聞く機会がありました。(この会議の模様は、日経新聞にも掲載されていました。)
少し大変なテーマですし、日常の仕事を若干離れますが、色々と考えさせられることが多かったので、感じた点を書いてみます。
このシンポジウムは、「人為的地球温暖化説」に関して、日本で中核的な役割を担う研究者達はもちろん、これに懐疑的もしくは否定的なメンバーを加えて、講演及びパネルディスカッションを行うという構成でした。人為的温暖化説に、懐疑論・否定論があるというのは少し驚きでしたが、聞いてみると(中には、とても「科学」とは言えないようなものもありましたが)、たしかに、人為的な温室効果ガスの増加だけが近年の温度上昇の原因なのかは、地球の長い歴史を見てみると確定的とはまだ言えないという点もあるようです。
とはいえ、この100年で、空気中の二酸化炭素は約1.5倍に増加し、地球全体の平均気温は0.74度上昇しています。この上昇(増加)の度合いは過去に例を見ないほど急激で、さらにこの10年ほどで、特に気温の上昇のペースが激しくなっています。色々なモデルを用いて計算してみても、この二つが大きく関係していることはまず間違いないというのが定説です(注)。ただし、かつて地球上で起こった温暖化や寒冷化と同じように、温室効果ガス以外に地球環境を左右する要素も考えられ、その影響度合いによっては、今後も単純にこのまま温暖化が続くかどうかは分からないという説もあるようでした。
しかしながら、いずれの立場に立つ人も、次のようなことを等しく力説していました。
今、地球が直面している状況は、極めてクリティカルである。具体的には、この「環境問題」に加えて、「資源問題」(化石燃料の可採期間の問題いわゆる「ピークオイル問題」もあってこちらも複雑)、「食糧問題」などが相互に関係し、いずれの問題も、極めて近い将来深刻化する恐れがある。(背景には、人口の爆発的増加もある。)このままいけば、人類にとって最も大切な「水」と「食糧」の問題を矛盾なく解決することは、(技術的にも、経済的にも、政治的にも)大変な困難を伴う。また、この問題が顕在化するのは、次の世代ではなく、この我々の世代である可能性も考えられる。さらには、顕在化の仕方によっては、大飢饉とか戦争とかの最悪のハードランディング・シナリオも考えられる。
すなわち、一言で言えば、今の社会は「持続可能」な枠組みになっていない。
というものです。(突然、深刻な話になってすいません。)
「ECO」は、まず身近でできることからと、家の中の白熱電球を全部電球型蛍光灯に取り替えたりしていた私にとって、上記の議論は少なからずショックでした。もちろん、これはこれで大切だという思いは全く変わりませんが、しかし、もう少し事態は深刻なのかも知れないとも考え始めました。
難しいテーマですから、これ以上の議論は差し控えます。皆さんもそれぞれの立場で、「持続可能な社会」とはどんな社会かを、自分のこととして考えてみて下さい。
(注)この辺りに関する最も新しいデータは、国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が2007年11月にまとめた(ノーベル平和賞の対象となった)第4次評価報告書の要約レポート(とその日本語仮約)に分かりやすくまとめられています。
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