昔の天気予報は「当たらないもの」の代名詞で交通事故のお守りになるといわれていました。
ところが、最近は結構信用があって、朝晴れていても、「夕方から雨」という天気予報がでていると、傘を持って通勤している人がたくさんいます。このところ何回か降った雪も、割に正確に予想していたように思います。一週間先はともかく、今日、明日の天気や気温については大体当たっているのではないかと思います。(そうでもないよという方もおられるかも知れませんが。)
どうして、天気予報はこのように腕を上げたのでしょうか。
それは、天気予報が、基本的には全てコンピュータ化されたことによります。
現在の天気予報作業は、まず基礎データを求めるため、地球を東西、南北に各20km間隔、高さ方向には60層に分解した格子点に熱力学や流体力学の物理法則を適用し、1週間先までの気温、気圧、風速、風向、水蒸気量などを計算します。(実際の観測データで随時補正しながら計算を続けていきます。)
この計算だけでは、実際の天気(雨とか晴とか、また雨量とか)は予想できないので、次に、計算結果を過去のデータとを突き合わせて(回帰分析して)天候や降水確率を予測する「天気翻訳」という作業を行って、最終的に発表される天気予報ができあがります。(もちろん、最後は人間がチェックしたり補正したりしますが)
昔は「地上天気図」だけしかなく、あとは予報官の勘と経験に頼っていましたが、昭和35年に一層の高層天気図を計算で求めるところからコンピュータによる天気予報がスタートし、IT技術の進歩の恩恵を享受しながら、改良を続けてきました。(考えてみれば、ちょうど、銀行のコンピュータ化と同じくらいの歴史があるわけです。)
このコンピュータ天気予報にも、少し先の予想になると精度が下がるとか、局地的な天気変化は予想できないなど、まだまだ改善の余地はありますが、それでも、スタートした頃に比べれば、格段の進化を遂げました。
その進化の原動力として、予報モデルの精緻化に加えて、実際の天候に合わせて回帰分析のパラメータを補正する作業を日々を行い、また、予報精度に関して様々な定量評価を行って常に精度を高めるようにモデルの改善を続けていることがあります。
則ち、@そもそものプロセスをできるだけ客観的で定量的(科学的)なものにすること、A改善のためのフィードバックループができていること、また、B結果を常に定量評価していることなど、「進化する系」としての形が整っていることが大きいと思います。
私たちの仕事も、ほぼ同じくらいの歴史を持っているわけですから、その進化の度合いにおいて負けないようにしなければと思っています。
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