2007年2月

2006年のお勧め本と「記録のスゝメ」




年末から、年始にかけて様々な年間ベストテンが発表されますが、私も、昨年読んだ本の中から、皆さんにお勧めしたいものを選んでみます。

スポーツが好きな方には、断然、「一瞬の風になれ」(佐藤多佳子/講談社)をお勧めします。ストレートな「スポーツ青春もの」ですが、深みも味もあります。3冊組と少し長いにもかかわらず、読み始めれば一気です。400mリレーを中心にした高校生アスリートのお話しで、まるで自分が走っているような気になります。時々ぐっと来るので、電車の中で読むのは注意した方がよいかもしれません。個人的には、はるかはるか昔に、400mリレーのアンカーを走ったときの感激を昨日のことのように思い出しました。(せいぜい「区大会」くらいの実力でした・・・。)
次に、少し異色のお話しで、「アイの物語」(山本弘/角川書店)というのはいかがでしょうか。表面上は、映画「ターミネーター」のように、アンドロイド(人型ロボット)に駆逐された未来の人間達という設定で始まるのですが・・・。「千夜一夜物語」形式をとる、とても形の整ったSFです。人間の未来に思いを馳せ、或いは、Web2.0の先にあることを空想してみようという方ご一読下さい。
青春がどういうものだったか忘れかけている方には、「鴨川ホルモー」(万城目学/産業編集センター)をお勧めします。いささか荒唐無稽なお話しではありますが、青春の熱気を思い出させてくれます。京都の雰囲気を上手に活かしているように思います。また、同じような雰囲気の(でも、もう一段破格で、更に痛快な)「夜は短し歩けよ乙女」(森見登美彦/角川書店)というのもあります。
私は、ミステリーも大好きですが、去年読んだ中では、余り思い当たりません。それでも、ミステリー作家伊坂幸太郎の「砂漠」「終末のフール」(実業之日本社/講談社)には感心しました。(残念ながら、余りミステリー風味はありません。)ちょっとクールに本を読んでみたい方いかがでしょうか。色々なことを考えさせてくれます。伊坂幸太郎は、元システムエンジニアなので、そういう意味でも親近感があります。こちらは、仙台が舞台です。
本を読むのが大好きな方は、「図書館戦争」(有川浩/メディアワークス)を是非。「好きな本を読む権利」を守るために機関銃を連射する破天荒なストーリーで、とにかくおもしろくて爽快です。続編「図書館内乱」も出ました。主婦作家有川浩(ヒロと読むらしい)さんは、去年大ブレークした一人で、この2冊以外のどれもお勧めです。
以上は、いずれも大変評判になった本なので、読まれた方も多いと思います。
最後に、少し地味なところで、漱石と「坊ちゃん」が好きな方に、「うらなり」(小林信彦/文藝春秋)という本はいかがでしょうか。小説「坊ちゃん」を、その登場人物である「うらなり」の立場から描いた後日譚です。何となく、坊ちゃんのストーリーに納得がいかない感じがある方は、ちょっとすっきりします。

私は、読書や音楽が大好きなので、本やCDをよく買います。ところが、何年か前に、間違って同じ本を二度買ってしまうという失敗が何回か続きました。そこで、思い切って、読書記録をつけることにしました。私の場合は、自分宛のメールで簡単な感想を残しています。メールソフトの機能を上手く使えば効率的に整理ができますし、思いついたときにどこからでも(例えば携帯電話からでも)感想を書けるので大変便利です。 始めてみると、同じ本を二度買わないという当初の目的以外にいくつかのメリットがあることに気がつきました。一つは、以前より少しきちんと本を読むようになったということです。感想を書き留めなければならないので、何を書こうか考えながら読むのが良いようです。それから、自分の考えを文章にするとても良い訓練にもなります。また、そうして残る記録は、自分にとってかけがえのない財産になります。もっとずっと若い頃からこういう習慣を持っていればどんなに良かったことかと今になって思います。
本に限らず、見た映画やコンサートの記録を残すのも良いかもしれません。

年があらたまって間もないこの時期に、是非始めてみて下さい。特に若い方々にお勧めです。


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