今月のテーマは「ピグマリオン効果」です。
ご存じの方もおられると思いますが、「ピグマリオン効果」というのは、アメリカの教育心理学者ロバート・ローゼンタールという人が行った実験に基づいています。この人は、「このテストは、1年後の成績の伸びを予想できる」と告げた上で、「ハーヴァード大学式学習能力開花期テスト」なるものをある学校の生徒に実施し、その成績の上位者の名前を担任の教師に伝えました。そして、それから1年後に、確かにそのメンバーの成績は上昇したというものです。
しかし、実際は、上位者を選んだわけではなく、全くランダムに選んだ子ども達だったという話で、「人間は期待された通りに成果を出す傾向がある」というのがピグマリオン効果です。(目をかければ人は必ず育つということ。その逆を「ゴーレム効果」というそうです。)
ちなみに、ピグマリオンというのは、ギリシャ神話のキプロスのピグマリオン王から来ています。この王様は生身の女性が得意ではなく(外貌に自信がなかったらしい)、それで象牙で理想の女性の彫刻をつくることに没頭しました。卓越した彫刻家だった彼が創造した女性像は美しく、それを彼はこの上なく大切にしました。そうしているうちに彫刻が人間であってほしいという夢を見るようになり、美の女神アフロディテの神殿を訪れ、彫刻像の女性を妻として迎えられるようにしてほしいと切実に祈りました。すると奇跡が起き、女性像が呼吸を始めたのです。その後、彼はこの女性と結婚し、娘のバフォスが生まれ、 彼の女性観も変わったというお話しです。(なんか少し怖い話ですね。)
ピグマリオン効果には、学説としては異論もあるようですが、私はこの話が大変好きです。また、皆さんの実感にもとても良く合うのではないかと思います。
どんな会社でも「人を育てる」というのは最も大切な組織としての使命ですが、当社のような会社では、特にそれが大切であることはいうまでもありません。そのためには、「人を育てよう」という一人一人の思い(すなわち組織の風土・文化)が一番大切だというのが、ピグマリオン効果の本質ではないでしょうか。それがあって、初めて、教育制度や教育カリキュラムが本来の効果を発揮するのだと思います。
最後に、先輩の方々に、言わずもがなのお願いを一つ。「成長」は、若手だけの特権でも義務でもありません。2年目の人は1年生のときより、3年目の人は、2年目のときよりぐんと成長するのは当然ですが、10年生は9年目より、20年生は19年目より着実に成長していると言えるようにありたいものです。
私も、昨日よりも今日、今日よりも明日が少しでも進歩していると言えるように、これからも頑張りたいと思っています。
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