「問題解決術」というと少し大げさですが、私が実践している「困っていることの解決法」をご紹介します。
この方法は、昔何かの本で読んだものです。(ミステリーの中で名探偵がつぶやいた一言だったように思いますが、それが何の本だったか、今となっては思い出せません。)その本には、こう書いてありました。
「何か困ったことがあったら、それに糸をつけて、そのまま頭のまわりを飛ばしておけばいい。いつか、必ず落ちてくるから、そうすれば捕まえればいい。決して糸を放さないのがコツだ。」
すなわち、課題・懸案があっても、解決を焦らず、いつも頭の片隅においておくのが良いという教えです。私はこれを読んで「なるほどな」と思い、実践してみることにしました。勿論、今日中とか、今週中とか期限の迫ったものにまでこの方法は適用できませんが、「いずれ解決しなければならない課題」を誰でもいくつかは抱えているものです。そういうものには、この方法はなかなか有効なのです。
「本当?」と思われる方も多いと思いますが、これが意外にうまくいくのです。そのとき以来、いつも私の頭の周りにはいくつもの課題が飛び回っていますが、私の経験で言えば、(「糸をつけたまま飛ばしておく」というのは、思ったほど簡単ではありませんが)かなりの問題はこの方法で解決してきたように思います。
そこで、その理由を少し考えてみることにました。
一つには「時間の経過」に効果があるのだと思います。課題の重要性というのは、結構時間と共に変わります。その当座はものすごく困ったことに思えるものでも、いつの間にか大した問題ではないと思えてくることがあります。また、周りの状況の変化で、自然に問題が解決に近づいてくることがあります。課題の解決には、一定の熟成期間が必要なことがよくあるのです。
もう一つは、意志決定するのに一定の時間がかかることが多いということです。特に意に染まぬ決断をするためには、「時間」が良い消化剤になるように思います。
そして何より「ずっと考え続けていること」の重要性だと思います。いつも思い詰めているというほどではないにしても、折に触れて、頭のまわりを飛んでいるのを眺め続けていると、その課題の性格や、特徴のようなものが見えてきます。そして、日常の経験の中で、その解決のヒントになりそうなことに出会うこともしばしばです。そういうことを積み重ねているうちに、だんだんと解決の糸口が見つかってくるということだと思います。
ノーベル賞級の発明が、夢の中で行われたという話をよく聞きます。確か湯川秀樹博士の「中間子の発見」も、きっかけは布団の中だったと記憶していますが、このように、長年取り組んできたテーマがふとしたきっかけで解決してしまうことが珍しくありません。「神の啓示」などとよく言われますが、むしろそれは、「ずっと考え続けている」ということの成果のように思います。考え続けることによって、知らず知らずのうちにその課題に費やした労力というのは、結構大きなものになっています。そして、成果は労力に比例することが多いものです。
勿論、全ての問題がこの方法で解決するわけではありません。いつまで経っても「落ちてこない」問題はかなり重要なものか、深刻なものである可能性があります。そのときは、思い切って直接その問題に立ち向かわなければなりません。頭の周りを飛ばせているうちに、深刻度もだんだん明らかになってくると考えればいいように思います。
年があらたまろうとしています。この時期、皆さんも身の回りの課題を整理して、今年中に片付けるべきものは、是非そうしてください。そして、来年でいいものについては、一度、この方法を試してみてください。
来年がさらにいい年でありますよう。
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