正岡子規の壮絶な人生を綴った本なので、お正月に読むには、少し重たかったかも知れないが、心揺さぶられる本だった。
子規をはじめとして、漱石、鴎外など日本の近代を切り開いた人たちの物語。きら星のごとくそれらの人々が登場する時代が眼前に展開し、あらためて、その時代の凄さを感じる。どうしてあのような時代があり得たのか、歴史の偶然だったのか、或いは必然だったのか。そんなことに思いを馳せさせられる。
考えてみれば、私も高校生時代に「漱石全集」を読んで思い切り感動し、「寺田寅彦全集」を読んで物理学者を志したくらいだから(残念ながら志は半ばになってしまったが)、あの時代の人たちに、人生の基礎を作ってもらったようなものだ。それはとても幸せなことだと今になってしみじみと思う。
「小説」というよりは、「伝記」に近い物語だと思うが、日本の文化史のど真ん中を、一点も揺るがせずにきちんと描いたこの本は、歴史の脇道を必要以上にフレームアップする「司馬遼」流が大嫌いな私にはとても胸のすく本である。 |