セツブンソウ

セツブンソウは2月初旬の節分(セツブン)の頃咲くのでその名があり、同じキンポウゲ科の福寿草と共に春を告げる花である。
主に石灰岩地の樹林内に生え、秩父の武甲山の周囲や日本百名山の一つである両神山周辺はこの花の宝庫であったが、その為、秩父のセメント産業の興亡の歴史とセメントを運ぶ秩父鉄道の歴史とに深く関わってきた花でもある。
石灰岩は炭酸カルシュウムから出来ている岩石でセメントの原料となり、全山が石灰岩からなる武甲山はセメント材料の宝庫でもあり、この為、大正十二年に秩父セメント(現太平洋セメント)が設立され、秩父は一大セメント産業の地となった。
筆者の散歩道の途中の熊谷市三ヶ尻に秩父セメントの主力工場が古くから有り、武甲山で切り出された原料を子会社の秩父鉄道で運び、セメントを生産して好景気の頃の日本経済の発展に寄与した。

一方、秩父の名山で日本武尊(ヤマトタケルノミコト)がその堂々たる風格に感動し、自らの甲を納めたと言う伝承からその名が付いたと言われるほど品格があり、又、種々の花が咲く花の山でもあった武甲山は削り取られ、1336mの標高が1295mになるほど山容を変え、現在は無残な姿をさらしている。 
セツブンソウにとっても住みづらい世の中になった。

熊谷工場と両神山     引き込み線と日光男体山    削り取られた武甲山

近代化の波に飲まれてセツブンソウはその数を減らしていったが、それでも未だあちこちに咲き、特に両神村の群生地は有名で、村ぐるみで保護に努めており、毎年セツブンソウを見に行くのを楽しみにしている人も多い。



セツブンソウの白い花びらのように見える部分はガク片で、花弁は黄色い蜜腺に変化している。
トリカブトに代表されるようにキンポウゲ科の花は毒をもつ事が多いが、この花もその可憐さに似合わず有毒である。

石灰岩地に咲くため、セメント産業の興亡や、山の変貌をずっと見続けた花である。

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