(原審:東京高判昭和40年8月31日(昭和40年(行ケ)第34号))
<判決>
上告棄却。
「上告代理人山本満夫,同原謙一郎の上告理由第一点について。
審決の再審事由としての判断の遺脱のごときは,別段の事情のないかぎり,審判当事者においてその審決謄本の送達を受けた当時これを知りえたと推認できること,並びに審判請求が代理人によつてなされたときは,一定の事由の知,不知は代理人について決するのを相当とし,従って,代理人が審決謄本の送達を受けたときは,右審決に存する判断遺脱の瑕疵は,代理人において右送達のあつた当時知つたものと認められ,審判当事者本人は,当時における不知を主張することを許されないことは,いずれも原判示のとおりである(民訴再審に関する最高裁判所昭和27年(ヤ)第3号同28年4月30日第一小法廷判決,民集7巻4号480頁および同庁昭和31年(オ)第15号同32年8月1日第一小法廷判決,民集11巻8号1437頁参照)。
論旨は,再審請求が特殊な救済手続であることにかんがみ,その請求期間は当事者本人が再審事由を了知した時から進行するものと解すべき旨を主張するが,審判手続の代理人がその審決膳本の送達を受けるまでの権限を有する以上,審決の瑕疵の知,不知のごときを当該代理人について判断すべきは当然であつて,再審請求なるが故をもつて特殊に解すべき理由は見出しがたく,また原判示を判例違反という所論も理由がない。結局代理人において抗告審判の審決に所論の再審事由の存在を覚知しえなかつた特段の事由の認められない本件においては,原判決に所論の違法は存せず,論旨は採用できない。
同第二点について。
原判決が,本件再審請求の対象とされた抗告審判の審決には,特許庁における甲第7号証に関する説示に欠けるところはなく,仮に右説示が同号証についての判断を誤つていたとしても,これを判断の遺脱とはいいがたい旨を判示したのは,正当であつて,審判手続の職権審理を理由としてこれを非難する所論は,首肯しがたい。論旨は理由がない。
よつて,民訴法401条,95条,89条に従い,裁判官全員の一致で,主文のとおり判決する。」