最判昭和32年8月1日(民集11巻8号1437頁(昭和31年(オ)第15号))

<判決>
 上告棄却。
「論旨は,違憲をいう点もあるが,その実質は単なる法令違反の主張である。訴訟代理人によつて訴訟を行う場合には,一定の事実の知・不知はまず訴訟代理人について決するのを相当とする。だから,訴訟代理人が判決の送達をうけた場合には,その訴訟代理人は判決理由中に所論判断遺脱の瑕疵のあることを知つたと認むべきであるから,当事者本人はその事由の不知を主張することは許されないものと言わなければならぬ(なお,原審における上告人の主張は,上告人は元の第一審判決に対して控訴手続をとるように篠原弁護士にたのんだが,同弁護士が控訴手続をとらなかつたというのであるから,上告人としても当時すでに右判決に所論判断遺脱があることを知つていたことが窺われる)。そして右判決に対して控訴がなされなかつたことは,原判決の認めるとおりであるから,本件は民訴420条1項但書にいわゆる「当事者ガ上訴ニ依リ・・・之ヲ知リテ主張セザリシトキ」に該当することは明らかである。それ故,その余の論旨について判断するまでもなく,本件再審の訴は法律上許されないものであり,原判決は結局正当である。論旨は採ることをえない。
 よつて,民訴401条95条89条に従い,裁判官全員の一致で,主文のとおり判決する。」