最判昭和41年11月18日(集民85号167頁(昭和39年(オ)第1469号))

(原審:東京高判昭和39年9月29日(昭和38年(ネ)第2391号))

<判決>
 上告棄却。
「上告代理人山田靖彦の上告理由第一点について。
 実用新案は,物品の形状,構造又は組合せに係る考案を意味することは,実用新案法1条から明らかであるが,原判決(第一審判決理由引用)が確定したところによると,本件登録実用新案は温床用覆布の構造に関するものであるというのであり,その要部は温床用覆布全体の二分の一以上の横幅を持つた塩化ビニール樹脂,ポリエチレン樹脂等よりなる一つの皮膜体に,温床用覆布全体の横幅の二分の一以下の幅を持つた化学繊維または天然繊維よりなる一つの網目体を連着してなる点にあるというのであるから,網目体が覆布の端部にあることをその構成の特徴として把えた所論原判示は正当であるというべきであつて,原審が実用新案を旧実用新案法にいわゆる「型」に関するものであつて考案として理解しないような見解を採つているとの所論非難はあたらない。論旨は理由がない。
 同第二点について。
 実用新案法26条は特許法70条を準用しているから,実用新案の技術的範囲,したがつてまたその権利の範囲は,登録請求の願書添付の明細書にある登録請求の範囲の記載に基づいて定められなければならないのであるが,右範囲の記載の意味内容をより具体的に正確に判断する資料として,右明細書の他の部分に記載されている考案の作用効果を考慮することはなんら差し支えないといわなければならない。また,原判示の所論作用効果をもつて,覆布自体の作用効果ではなくして単なるその使用方法の作用効果にすぎないとする論旨も,独自の見解にすぎない。要するに,原判決は本件登録実用新案権の範囲を願書に添付した明細書の登録請求の範囲の記載に基づいて判断しているのであつて,そこに記載のない事項によつて右範囲を定めたものとはいえないから,論旨はその前提において誤つている。論旨は採用できない。
 同第三点について。
 本件登録実用新案と本件温床用覆布とは,その構成および作用効果を異にし,後者が前者の権利を侵害するものとはいえないとした原審の判断は,原判決確定の事実関係のもとにおいてはこれを是認すべきである。論旨は,独自の見解に立脚して原判示を非難するものであつて,採るを得ない。
 よつて,民訴法401条95条89条に従い,裁判官全員の一致で,主文のとおり判決する。」