楽しいバッハのカンタータ    廣垣 源之助

 ある日、バーゲンで"バッハのカンタータ大全集"のバラ売りを見つけまして(カンタータ第78番ハイルブロン・ハインリヒ・シュッツ合唱団とプフォルツハイム室内合唱団/指揮:フリッツ・ヴェルナー)、何気なく試しに1枚買ってみました。
 家に帰って、早速針を下ろし聴いてみると、なかなか良いのです。特に2曲目のソプラノとアルトの二重唱は素晴らしいの一言に尽きると思います。モーツァルト風のカノンの様な曲でして、私は今までモーツァルトとロッシーニ以外でこんな楽しい上等な音楽を聴いたことがありません。3曲目から7曲目までは私も嫌いなレチタチーボもありますが、ここさえ辛抱すれば、フィナーレのコラールも素晴らしいものです。本当に良い買物をしたものです。
 あくる日、何はさておきレコード店へ走ったことは言うまでもありません。カンタータばかりを5、6枚も買って大急ぎで家に帰っては、立て続けに聴いてみました。ところがあみはからんや、全部難しい宗教音楽ばかりで、がっかりでした。やはりバッハは私如きの理解を越える存在の様です。
"バッハのカンタータは78番に限る"こう納得した次第です。

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