朝の食卓
朝の光が鮮烈にさしこむ
食卓は いつもの色彩にあふれて
真紅はジュース チーズは黄
よく冷えたミルクの白に
たゆとう香りはコーヒー色
狐色のトーストにのせた
ブルーベリーのひとさじに
高原の冷気を感じる
レースのカーテンに散乱する光は
今日の暑熱を予告しているが
それでも今朝は涼風が立って
そういえば昨夜は虫の音がしげく
ひそやかにしのびよる秋の
気配が そこここに示されて
この季節の食卓がめぐりくる
実りの時への移り行きに
プリンスメロンの淡い緑が
濃い紫のぶどうの大房と
うすくれないの水蜜桃に
瑞々しい梨の実に
とりかわる
季節の変わり目に 変奏のリズムが
フルーツの皿に刻まれるのも
あれ以来、いつもの時が
食卓の上に流れている
食卓を囲んで
一段とにぎやかに こもごもに
語る声は これからを夢見て
過ぎ行きし年月の成果を
しのばせても
食卓の上の色取りの
変らざるごとく
あの年の夏さながらに
変らざるものは
きみとぼく
やがて来る秋冷のとき
ふたりの歩みは
またひとつ年輪を加えて行く
1986.8.25
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