安田 亨:東大数学で1点でも多く取る方法―理系編―

作成日:2014-01-19
最終更新日:

概要

東大の入試問題をほとんど解けずに帰ってくる生徒たちの 少しでも力になりたいと願い、 合格に有益な情報を提供したいと思い、著者は本書を書いた。

感想

書名

書名について、著者は「刺激的」と評している。私は「えげつない」と思っているが、 読めばおもしろいことが書いてある。

近似値

大学受験で必要なものを書いておく、そしてここまで正しいという値を示している(p.59)。 その中で、末尾を四捨五入した値について、著者は注釈をしている。例

`sqrt(6) = 2.44948` (によくよく,後の「く」は本当は8)
`log_10 7 = 0.8450` (はよこい,「い」は本当は0)

私の解釈では、著者のいう 本当の という意味は、言い換えれば後に続く数字を切り捨てた値ということで、 `2.44948 <= sqrt(6) < 2.44949` ということを言っている。`log_10 7` についても同様である。 一方、一般の覚え方は後に続く数字を四捨五入した値を言うので、 `2.449485 <= sqrt(6) < 2.449495` と解釈した値で覚えられている。 私としては後者の解釈を取る。 その理由は、誤差の範囲はプラスマイナスに広がることを認識するのがよいと思うからだ。 伝統に従うべきだ、という理由からではない。 ただ、著者から、それは数学の解釈とは違うと言われれば返す言葉がない。

文字の使い方

著者は同書の各所で、東大の問題文での文字の使い方を批判している。以下引用する。

実は、このようなはっきりとした言明で数学の常識を明かしてくれたのは、この本が初めてであった。

アイコン

この本では、安田氏の自己突っ込みがあちこち入っている。 その一つは p.317 などにあり、安田氏が棒で殴られ★が出ている顔がイラストで、あたかもアイコンのように小さく出ている。 一方で、p.141で、(前略)「簡単だ」という言う人すらいます. しかし,時間制限がある受験生や,私のように解く力がないものにとっては(x_x)☆\(^^;)ポカ というような顔文字と擬音文字の表現もある。おそらく著者や本書の編集者は、 後者の文字表現を、前者のイラストですべて変換したかったのに違いない、 と私はにらんでいる。同じ文字表現は、p.119 にもある。

ガウス・グリーンの定理

次の定理が、ガウス・グリーンの定理として挙げられている。

`x = x(t)`, `y = y(t)` と媒介変数表示された曲線 `C` があり, 点 `P(t) = (x(t), y(t))` は `t` の増加とともに原点 `O` の回りを左回りに回るとする. `t = alpha` から `t = beta` まで `OP` の掃過する面積 `S` は
`S = int_alpha^beta 1/2 {x(t)y'(t) - x'(t)y(t)}dt`
である.ただし `x(t), y(t)` は微分可能で,`x'(t), y'(t)` は連続とする.

この式の導出方法は、本書を参照してほしい。 この形の定理は大学への受験の数学で知られているが、 大学に入ったあとの数学では様相が異なる。 通常出てくるのは、グリーンの定理と呼ばれるものだ。これは二次元のグリーンの定理、平面のグリーンの定理とも呼ばれる。

単純閉曲線 `C` で囲まれた領域 `D` を考える。1回微分可能な関数 `P(x, y), Q(x, y)` について、 次の等式がなりたつ。

`oint_c (Pdx + Qdy) = int int_D((delQ)/(delx) - (delP)/(dely))dxdy`

似ているような、似ていないような式である。両者はどのような関係にあるかわからず、 数年間ずっともやもやしていたのだが、 やっとわかった。本書でいうガウス・グリーンの定理は、私があげたグリーンの定理の特殊例だったのだ。 詳しくは、 寺沢寛一:自然科学者のための数学概論 を参照のこと。(2021-09-24)

数式記述

このページの数式記述は ASCIIMathML で 表現はMathjaxを用いている。

書誌情報

書 名東大数学で1点でも多く取る方法―理系編―
著 者安田 亨
発行日平成 24 年 7 月 25 日(増補版第 1 刷)
発行元東京出版
定 価1,900 円(本体)
サイズA5 ページ
その他ゴミ捨て場で拾ってきた
ISBN 978-4-88742-180-0
NDC

まりんきょ学問所数学の本 > 安田 亨:東大数学で1点でも多く取る方法―理系編―


MARUYAMA Satosi