涌井 良幸:高校生からわかるベクトル解析

作成日:2018-05-13
最終更新日:

概要

副題は「専門数学へのかけ橋」

感想

平面におけるグリーンの定理

p.281 では、平面におけるグリーンの定理が紹介されている。これは次のとおりである。

`xy` 平面における領域を `D` 、その領域 `D` を囲む閉曲線を `C` とすると、次の関係が成立する。 ただし、`P, Q` は、`x, y` の関数 `P = P(x, y), Q = Q(x, y)` である。
`int_C (P dx + Q dy) = int int_D((del Q)/(del x) - (del P)/(del y)) dxdy`
これを平面におけるグリーンの定理という。ここで、閉曲線 `C` の向きは、領域 `D` を左手に見て一周するものとする。

その注釈ではこうある。

本来、「グリーンの定理」というのは、ここで紹介した「平面におけるグリーンの定理」 とは違うものである。

では本来のグリーンの定理とは何だろうか。手元の本をいろいろ見てみよう。

岩波講座 応用数学 基礎解析 II

区分的に `C^1` 級正則な曲線 `C` によって囲まれた領域 `S` とそれらを含む範囲で `C^1` 級のベクトル場 `bb(F) = (f,g)` に対して
`int int_S((del g)/(del x) - (del f)/(del y)) dxdy = int_C bb(F) * bb(u) ds`
が成り立つ。

これは同じだな。

岩波講座 応用数学 微分方程式 II

p.162 では Green の定理自体のヴァリエーションとして次の2式を紹介している。

`int int_Omega (u_xv_x + u_yv_y) dxdy = int_Gamma u (del v)/(del nu) ds - int int_Omega u(v_(x x) + v_(yy)) dxdy`
`int int_Omega ((del P)/(del x) + (del Q)/(del y))dxdy = int_Gamma (-Qdx + Pdy)`

p.245 と p.246 では、次の 2 式を `n`次元の Green の定理として取り上げている。

`int int_Omega (u Delta v - v Delta u) dx = int_(del Omega) (u (del v)/(del nu) - v (del u)/(del nu) )dS_x`
`int int_Omega (u Delta v + Delta u * Delta v)dx = int_(del Omega) u(del v)/(del nu) dS_x`

ここで、 `Omega` は `RR^n` の領域、`u(x), v(x)` は `bar(Omega)` 上で定義された `C^2` 級関数である。また、`del Omega` は `Omega` の境界, `bar(Omega) = Omega uu del Omega` である。

上の 2 つは平面における Green の定理のようだが、下の 2 つは どうやら `n` 次元で成り立つから違うな。

自然科学者のための数学概論

自然科学者のための数学概論にグリーン関数の記載がある。 同書の pp.102-103 から抜粋する。

`int int int_V u nabla^2 v dxdydz + int int int_V ((del u)/(del x)(del v)/(del x) + (del u)/(del y)(del v)/(del y)+ (del u)/(del z)(del v)/(del z))dxdydz= - int int_S u (del v)/(del n) dS`

という関係を得る.これを Green の定理という.(中略)

`int int int_V (u nabla^2 v - v nabla^2 u) dxdydz = - int int_S (u (del v)/(del n) - v (del u)/(del n))dS`

という式が得られる.これも Green の定理ということもある.

これは「平面におけるグリーンの定理」とは違う。なお、「平面におけるグリーンの定理」に相当する式は直前の項にあって、 Gauss の積分定理の一応用として次の式で書かれている。

`int int_S((del V)/(del x) - (del U)/(del y))dx dy = oint_c (U (dx)/(ds) + V(dy)/(ds)) ds`

結論

「平面におけるグリーンの定理」と<本来>の「グリーンの定理」とは、それぞれ「二次元のグリーンの定理」と 「三次元のグリーンの定理」であろうと推測する。この結論に至る過程で Wikipedia の「グリーンの定理」も参考にした。

数式表現

MathJax を用いている。

書誌情報

書 名高校生からわかるベクトル解析
著 者涌井 良幸
発行日2017 年 12 月 15 日
発行元ベレ出版
定 価2000円(本体)
サイズA5 版 149ページ
ISBN 978-4-86064-531-1
NDC414.7

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