「まえがき」から引用する。
多くの線型代数学の教科書とは異なって本書では,短い序章のあとすぐに, 抽象的なベクトル空間と線型空間が扱われる.列ベクトルや行列はそれらを表現するものとして登場し, 次の第2章で抽象論との平行性が強調される.線型代数学を学習するに際しては, こういったベクトル空間の理論にできる限り早く慣れることが大切なのである. 行列演算や行列式の計算を軽視してよいというわけでは,決してないけれど.
本書は、数学科のための線形代数という印象がある。上記で引用した「まえがき」でもわかると思う。
このまえがきでは、Jordan 標準形の一意性は,`f`-直規約分解の一意性を module theoretic に証明することによっても示されるわけであるが,
これはほとんど Krull-Schmidt の定理なので,敬遠せざるを得ず,
と続く。<module theoretic に証明する>とは、「加群の理論によって証明する」という意味なのだろうか。
もちろん、Jordan 標準形については証明も含めて記述がある。
その方法は吉野雄二「基礎課程線形代数」に近いと思われる。
pp.167-168では参考書が 16 冊あげられている。最初の 3 冊と評は次のとおりである。
[1] 佐竹一郎: 線型代数学,裳華房(1958(1974 改題)).
[2] 斎藤正彦: 線型代数入門,東大出版(1966).
[3] 野水克己: 線形代数の基礎 上,下(矢野健太郎訳),裳華房(1974)
(中略)
[1]~[3]は以前から名著の誉れ高いもので,特に [1],[2] は著者も執筆中,これらをかなり意識した.(後略)
[1] と [2] は線型代数の教科書として有名だが、[3] は知らなかった。著者は英語で書いたということなのだろう。
数式表示には MathJax を使っている。
書名 | 線型代数学 |
著者 | 渡辺豊 |
発行日 | 昭和55 年(1980年)9月30日 初版第2刷発行 |
発行元 | 培風館 |
定価 | 1600 円(本体) |
サイズ | A5 判 187 ページ |
ISBN | なし |
備考 | 川口市立図書館で借りて読む |
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