幾何の論理について。
以下は、この本でのみ通用する用語である。
一応正確に書いた図を見れば真であることが明らかな命題。
どんなに正確に図を書いても真であることを図から判断できない命題。
三点 A, B, C のいずれをも通らない直線 `l` は三つの線分 AB, AC, BC のいずれとも交わらないか、 またはその二つと交わって他の一つと交わらない。
著者は、平面幾何の命題は第一種の命題と第二種の命題に二種類に分類できる、という仮説
を立てている。
そして、第一種の命題を自明の事実として、第二種の命題を証明したのであるから、論理的に厳密であった、としている。
ここで第一種の命題に相当するものとして、「三角形の二つの中線は交わる」、「直線は平面を二つの領域に分ける」、パッシュの公理などがある。
三角形から、ある手続きに沿って得られる9点は、同一円周上にある、という。これをコンピュータ上で作図しようとして、 悪戦苦闘した。JavaScript のページの九点円がそれである。 美しいと思う。
先の九点円に関連して有名な初等幾何学の定理がこのフォイエルバッハの定理である。三角形の内接円は九点円に内接する、 というのがその定理だ。p.119 で次のように小平氏は記している。
沢山勇三郎氏は東京物理学校雑誌に一人で実に 22 通りの証明を発表して世の注目を浴びました。
これを見て笑ってしまった。22 通りもの多くの証明を発表したのがほかならぬ「沢山」氏であったということにである。 なお、沢山氏が発表した論文の抄録には
ふをいゑるばつはノ定理ノ證明ニ就テ 澤山勇三郎
Y. SAWAYAMA:-AN ELEMENTARY DEMONSTRATION OF FEUERBACH'S THEOREM.
とあるので、当然ながら姓は「さわやま」と読む。
書名 | 幾何への誘い |
著者 | 小平 邦彦 |
発行日 | |
発行所 | 岩波書店 |
定価 | 円(本体) |
サイズ | 文庫版 |
ISBN | |
その他 | 岩波現代文庫 |
NDC | 414 |
まりんきょ学問所 > 読んだ本の記録 > 小平 邦彦:幾何への誘い