この第Ⅰ分冊の「まえがき」から引用する
本稿の“体と Galois 理論” においては,代数学全般,代数的整数論,環論,代数幾何学,代数群などの理解に必要な基本的事項として主として体の拡大の理論, Galois 理論,付値論などについて解説する.
この第Ⅰ分冊では、「環と体」、「代数拡大体」について述べられている。
なお、本書のⅠのほか続巻のⅡ、Ⅲは合わせて「体とガロア理論」として岩波基礎数学選書として刊行されている。
私は頭が悪いので、内容が理解できない。まず、第1章からみてみる。
たとえば、p.4 で次のような記述がある。
環 `R` の単元全体が乗法に関して作る群 `R^times` を `R` の乗法群という.
単位元をもつ環 `F` において,`F` の乗法群 `F^times` が `F` の 0 以外の元全体 `F - {0}` と一致する (すなわち,`F` の 0 以外の下はすべて `F` の単元である)とき, `F` は斜体(または非可換体)であるという.
斜体 `F` において `xy = yx ( AA x, y in F)` がつねに成り立つとき,`F` は可換体または体であるという.
この記述を読んで、可換体であればそれは斜体でもある、ということがわかった。それぐらい、私はものわかりが悪い。
また、p.6 で次のような記述がある。
環 `R` の部分集合 `fra` が次の条件を満たすとき,`fra` を `R` の左イデアルという.
- `fra` は `R` の加法群としての部分群である.
- 任意の元 `lambda in R, a in fra` に対して `lambda a in fra`.
左イデアルとは、環 `R` の乗法を考えたとき、左にあるのが任意の元のほうなのか、それともイデアルのほうなのか、わからなかった。この定義を見て、右側にイデアルがあれば、 左にどんな元がきてもイデアルになってしまう、というように覚えればいいことがわかった。左側からイデアルにさわれば、ちょうどミダースの王様のようにさわったすべての元がイデアルにある、 ということだ。
イデアルというのは私にはわからないが、思い出すことがある。学生のとき線形代数の教官が何を思ったかイデアルの定義を説明した。すると私の友達が「イデアルには左と右の区別があるのですか」 と質問した。教官は「はい、左イデアルと右イデアルがある。こういう定義のときには左イデアル、この逆が右イデアル、そして左イデアルかつ右イデアルのときは両側イデアルといったり、単にイデアルという」と答えたはずだ。 私は、よくそんなことを質問できるものだと感心した。ついでにいえば、教官はイデアルの説明のときにいわゆるフラクトゥールを書いたはずだと思うのだが、どのようにして板書したのか、さっぱり思い出せない。
第1章の章末に問題が pp.44-45 にかけてたくさんある。一つは問題を解こう。
1 単位元をもつ可換環 `R` の元 `x` に対して,`x^m=0` となる自然数 `m` が存在するとき, `x` をベキ零元という. `x in R` をベキ零元とすれば,`1 + x` は `R` の単元であることを示せ.
こんな感じだろうか。
`x^m= 0` とする。このとき
`(1 + x)(1 - x + x^2 + cdots + (-x)^(m−1)) = (1 - x + x^2 + cdots +(-x)^(m−1))(1 + x) = 1 - (-x)^m = 1`
であるから `1 + x` は正則元である。
次に第2章をみてみる。この章は代数拡大体だから、ここがわからないと次に進めないので読んでみるが、やはりわからない。ただでさえわからないのに、 p.57 の例 2.9 ではフォントが1段階小さくなっている。その先の補題や証明も小さいので、大変だ。
p.65 の§ 2.4 は「線型無関連性(線型離別性)」となっている。無関連とか離別とか、いいことばだな。
第2章の章末にもpp.143-148 にかけて問題がたくさんある。一つは問題を解こう。なお、本書における有理数の集合 Q を本引用では `QQ` と表示している。
14 `K` を次の体とするとき,`[K:QQ]` を計算せよ.
(i) `QQ(sqrt(2), sqrt(3))`, (ii) `QQ(sqrt(2), root(3)(3))`, (iii) `QQ(root(3)(2), sqrt(3))`, (iv) `QQ(root(5)(2), root(5)(-2))`, (v) `QQ(root(3)(2)-sqrt(2))`, (vi) `QQ(root(3)(3)- root(3)(2))`.
(i) だけだったら解けるかもしれない。実は、答だけなら本書の p.69 にある。以下引用する。
例 2.13 `K=QQ(sqrt(2)), L=QQ(sqrt(3))` とすれば(中略) 上の例の `K, L` に対して `KL = QQ(sqrt(2), sqrt(3))` の `QQ` 上の拡大次数は定理 2.16 により `[KL:QQ] = [KL:L][L:QQ] = [K:QQ][L:QQ] = 4` である.
これだけだとわかった気にならない。中島匠一「代数方程式とガロア理論」を見ると、p.185 の 4.63 [例] で、次のように書かれている。
`QQ(sqrt(2), sqrt(3)) = {a + bsqrt(2) + csqrt(3) + dsqrt(6) | a, b, c, d in QQ}`であることがわかる.
そういえば高校数学で、「`a+bsqrt(2)+csqrt(3)+dsqrt(6)=0 (a,b,c,d in QQ)` であれば、`a = b = c = d = 0` であることを証明せよ」という問題を見たことがあるような気がする。
数式記述は ASCIIMath を用いている。
題名 | 体と Galois 理論Ⅰ |
著者 | 藤﨑源二郎 |
発行日 | 1977 年 3 月 2 日 第1刷 |
発行元 | 岩波書店 |
定価 | |
サイズ | A5版 |
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NDC | |
備考 | 草加市立図書館で借りて読む |
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