「まえがき」より
本書では,式の計算・座標や微積分にもとづいて双曲幾何を論ずる.
とある。言い忘れたが、本書は「岩波講座 現代数学への入門」全 10 巻( 20 分冊)
の俣野博著「微分と積分3」と同時配本である。
また、本書は後に同名で単行本化されている。
記述の程度は高く、私には理解できない個所がほとんどである。 本文中にある問には解答またはヒントが与えられているが、 解答もヒントも与えられていない問が1つだけある。p.12 にある次の問である。
問2 補題 1.15 を計算をせずに初等幾何で証明できないか. (証明できそうなのだが,筆者には思いつかなかった.)
補題1.15は次の通りである。なお、適当に用語を補っている
補題 1.15 球面 `S^2` の部分集合 `L` に対して,次の (i) と (ii) は同値である.
(i) `L` は小円である.
(ii) `L` のΠ による像 Π `(L)` は,円または直線である.ここでΠ は立体投影を表す写像である.
幾何学者である本書の著者が証明できないのだから、私に証明できるはずがない。同じような記述は、 p.103 の問4 にも見られる。
p.27 では次のような記述がある。
定義 1.50 (i) が成り立つとき,Φ を双曲的(loxodromic), (ii) が成り立つとき,Φ を楕円的(eliptic), (iii) が成り立つとき,Φ を放物的(parabolic)と呼ぶ.
双曲的は hyperbolic ではないのだろうか。調べると、loxodromic には「斜航型」の訳語を当てることが多いようだ。 その場合、双曲的(双曲型)は、斜航型の特別な場合を指すようだ。本書は loxodromic を双曲的といっているので、 混同しないようにしたい。
p.38 でフラクトゥールが出てくるので焦る。`frh` は上半平面のことである。
このページの数式は MathJax で記述している。
Amazon のページでいくつか指摘されているが、そこにないものを挙げる。 p.37 の図 2.1 ピタゴラスの定理 の図で、点 `P` の `y` 座標が `Q_1` となっているが、正しくは `P_2` である。 同様に、点 `Q` の `x` 座標が `P_2` となっているが、正しくは `Q_1` である。
書名 | 双曲幾何 |
著者 | 深谷 賢治 |
発行日 | 1996 年 8 月 27 日 |
発行元 | 岩波書店 |
定価 | 2分冊合計定価 3495 円(本体) |
サイズ | AS版 167 ページ |
ISBN | |
その他 | 越谷市立図書館にて借りて読む |
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