深谷 賢治 : 双曲幾何

作成日 : 2021-08-22
最終更新日 :

概要

「まえがき」より 本書では,式の計算・座標や微積分にもとづいて双曲幾何を論ずる. とある。言い忘れたが、本書は「岩波講座 現代数学への入門」全 10 巻( 20 分冊) の俣野博著「微分と積分3」と同時配本である。 また、本書は後に同名で単行本化されている。

感想

記述の程度は高く、私には理解できない個所がほとんどである。 本文中にある問には解答またはヒントが与えられているが、 解答もヒントも与えられていない問が1つだけある。p.12 にある次の問である。

問2 補題 1.15 を計算をせずに初等幾何で証明できないか. (証明できそうなのだが,筆者には思いつかなかった.)

補題1.15は次の通りである。なお、適当に用語を補っている

補題 1.15 球面 `S^2` の部分集合 `L` に対して,次の (i) と (ii) は同値である.
(i) `L` は小円である.
(ii) `L` のΠ による像 Π `(L)` は,円または直線である.ここでΠ は立体投影を表す写像である.

幾何学者である本書の著者が証明できないのだから、私に証明できるはずがない。同じような記述は、 p.103 の問4 にも見られる。

p.27 では次のような記述がある。

定義 1.50 (i) が成り立つとき,Φ双曲的(loxodromic), (ii) が成り立つとき,Φ楕円的(eliptic), (iii) が成り立つとき,Φ放物的(parabolic)と呼ぶ.

双曲的は hyperbolic ではないのだろうか。調べると、loxodromic には「斜航型」の訳語を当てることが多いようだ。 その場合、双曲的(双曲型)は、斜航型の特別な場合を指すようだ。本書は loxodromic を双曲的といっているので、 混同しないようにしたい。

p.38 でフラクトゥールが出てくるので焦る。`frh` は上半平面のことである。

数式記述

このページの数式は MathJax で記述している。

誤植

Amazon のページでいくつか指摘されているが、そこにないものを挙げる。 p.37 の図 2.1 ピタゴラスの定理 の図で、点 `P` の `y` 座標が `Q_1` となっているが、正しくは `P_2` である。 同様に、点 `Q` の `x` 座標が `P_2` となっているが、正しくは `Q_1` である。

書誌情報

書名双曲幾何
著者深谷 賢治
発行日1996 年 8 月 27 日
発行元岩波書店
定価2分冊合計定価 3495 円(本体)
サイズAS版 167 ページ
ISBN
その他越谷市立図書館にて借りて読む

まりんきょ学問所数学の部屋数学の本 > 深谷 賢治 : 双曲幾何


MARUYAMA Satosi