「序」から引用する。
数学教育の一環としてグラフ理論に興味をもち,学ぼうとしている若い学生のために本書は書かれている.
この著者のB・ボロバッシュという人は、たぶん「ボロバシュ 数学の技法」のボロバシュのことであり、 Wikipedia の「ベラ・バラバシ(ja.wikipedia.org)」のことだと思われる。
pp.48-49 にある演習問題の 2 は初歩的であるという印がついている。問題はこうだ。なお、すべての枝は単位抵抗であると仮定する、という注釈がある。
図 1.1 に示された回路網の点 2 と 3 の間の抵抗を求めよ.
私には初歩的には見えない。私は若くもなく学生でもないからお呼びでないのだろう。 さて本問を最初はデルタ-スター変換(本書では星-スター変換)で計算しようとしたが、これはこれで計算が大変だ。1時間以上も考えて出た結論は次の通りだ。
まず、1-4 の中点(2-5 の中点でもあり、3-6 の中点でもある)を 0 、5-6 の中点を M とすると、回路が0-Mで上下対称であることに着目する。上下対称だから、0 と M はどちらも電位が同じであり、 (2-3の電位差の半分)、よって、0 と M は短絡可能である。すると、この回路網は次の回路網と等価である。曲線の抵抗は 0.5 である。
以下は上半分のみを考察する。また、0, M は単に 0 と書く。まず、6 と 0 は抵抗 1 と抵抗 1/2 が並列で接続されているので、6 と 0 の抵抗は `(1 * 1//2) / (1 + 1 //2) = 1/3` である。 つぎに、1 から 6 を経由して 0 に至る抵抗は `1 + 1/3 = 4/3` である。そして 1 から 0 に直接つながれる抵抗と 1 から 6 を経由して 0 に至る抵抗の並列接続は、 `(1 * 4//3) / (1 + 4//3) = 4/7` である。その結果 2 から 1 を経由して 0 に至る抵抗は `1 + 4/7 = 11/7 ` である。そうすると、上半分で 2 から 0 に至る抵抗は、最終的に `(1 * 11//7) / (1 + 11//7) = 11/18` となる。以上が上半分のみの抵抗である。回路網全体ではこの二倍だから最終的な結果は `11/18 * 2 = 11/9` となる。
答が出たことで気をよくして、ひょっとしたらデルタ-スター変換でもうまく解けるのではないかと思い始めた。私がデルタ-スター変換での計算が大変だと思った原因は、 回路網のどこをデルタとして、どこをスターとして、どの順番で変換するかの見極めが下手だったからに違いない。また延々と考えて、次のようにすれば比較的計算がらくなことに気づいた。
解答(その1)と同様に中心の点を 0 とする。点 1 と 点 6 から出る辺をスターとみなして、これらにスター-デルタ変換を適用すると次のようになる。青の1辺は抵抗 1 で、緑の太線と曲線はどちらも抵抗3である。
辺 0-2, 0-3, 0-5, 0-6 はすべて並列接続であり、これらの抵抗はすべて 3/4 になることがわかる。これを改めて赤線で書くと、次の回路網となる。
辺 0-2, 0-3, 0-5, 0-6 はすべて並列接続であり、これらの抵抗はすべて 3/4 になることがわかる。これを改めて赤線で書くと、次の回路網となる。 こんどは 026 と 035 にスター-デルタ変換を適用すると、次の回路網となる。
デルタ 026 とデルタ 035 をスターに変換するときのスターの結節点をそれぞれ A, B とすると、A-2, A-6, B-3, B-5 の抵抗はすべて 1/2、0-A, 0-B の抵抗はすべて 1/4 である。 ここまでくればあとは計算するだけである。A-0-B と A-6-5-B の抵抗はそれぞれ 1/4 と 2 であるから、A-B の並列抵抗は 2/9 である。2-AとB-3 の抵抗 1/2 を足して、2-3の抵抗は 11/9 となる。 よかった。解答1と同じだ。
書名 | グラフ理論入門 |
著者 | B・ボロバッシュ |
訳者 | 斎藤伸自・西関隆夫 |
発行日 | 昭和 58 年(1983 年) 4 月 30 日(初版) |
発行元 | 培風館 |
定価 | 2700 円(本体) |
サイズ | A5 版 |
ISBN | 4-563-00544-4 |
その他 | 草加市立図書館で借りて読む |
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