「まえがき」から引用する。
この本は,かなり気まぐれな問題集であることを強調しておかなければならない.
確かに、この問題集はきまぐれである。まず、問題の並び方が無作為のようだ。 つまり、分野別でもなく、難度の順でもない。 知られていない問題が多いと思うが、有名な問題もある。
私が見たことがある問題は数少ない。そんな数少ない問題を見てみよう。
2. 整数列
- いずれも `2n` より大きくない `n + 1` 個の正整数の中に,一方がもう一方を割り切るような 2 数があることを示せ.
- いずれも `2n` より大きくない `n + 1` 個の正整数の中に,互いに素であるような 2 数があることを示せ.
(iii, iv は略)
この問題の i は、たとえば、安田 亨:入試数学 伝説の良問 100や、 大山達雄:パワーアップ離散数学などで取り上げられている。また、次の問題もよく知られている。
44. 内角の三等分線
三角形の内角の三等分線は,ある正三角形の頂点で交わることを証明せよ.
これはモーリーの定理として知られている。
将棋を指す人であれば、千日手のことは知っているだろう。現在の千日手の定義は、 「同一局面が1局中に4回」である。ここで同一局面とは、駒の配置、両対局者の持ち駒の種類や数、手番が全く同じ状態をいう。 過去の千日手の定義は、「同一局面に戻る同一手順を連続3回」であったが、これでは同一局面に戻る手順が複数ある場合、このルールでは千日手にならないように無限に指し手を続けることが可能である。 無限に指し手を続ける実際の手順については構成できるが、なぜこの構成が無限にできるかの証明はきちんと理解したことがなかった。 本書では、94 番がスーの定理として述べられている。
94. 三乗を含まない語:スーの定理
2 要素の文字集合からなる無限長の語で,どのブロックも 3 回連続して現れることはないようなものが存在する.
証明は本書の pp.166-167 にある。
本書ではときどき、イプシロンということばが出てくる。これは、`epsilon-delta` 論法の `epsilon` ではなく、数学者の卵のことを指している(本書 p.38)。
p.48 の「12. 予期しない不等式」では、解くべき問題が次のように述べられている。
`a_1, a_2, ldots` を正実数とする.このとき,
`"lim sup"_(n->oo) ((1+a_(n+1))/a_n) ge e`が成り立つ.(後略)
正しくはこちらではないかと思われる。
また、p.49 の中ほどに次の式がある。
`lim_(n->oo) ((1+a_(n+1))/a_n) = lim_(n->oo) ((1+K(n+1))/(Kn))^n = lim_(n->oo) (1+(1+1//K)/n)^n = e^(1+1//K) `
これも、最も左の式の `n` 乗が抜けていると思われる。正しくはこうだろう。
なお、第 1 章の問題 p.2 の式は正しい。
数式は MathJax を用いている。
書名 | ボロバシュ 数学の技法 |
著者 | B. ボロバシュ |
訳者 | 川辺治之 |
発行日 | 令和 4 年(2022 年) 7 月 25 日 発行 |
発行元 | 丸善 |
定価 | 4800 円(本体) |
サイズ | A5 版 |
ISBN | 978-4-621-30731-1 |
備考 | 越谷市立図書館で借りて読む |
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