青本和彦・加藤和也・上野健爾・高橋陽一郎・神保道夫・難波莞爾:現代数学の流れ2

作成日:2021-09-05
最終更新日:

概要

現代数学の流れ1」に引き続き、 オムニバス形式で現代数学の流れをたどる。計6章からなる。 本分冊は「岩波講座 現代数学への入門」の第8回配本である。

感想

第5章 可換から非可換へ

神保道夫氏の執筆になる本章は、可換から非可換への以降をめぐるいくつかの話題を紹介し(p.103)ている。

p.114 から引用する:

さて,量子力学において,「粒子」の座標と運動量に対応する量をそれぞれ `Q`, `P` であらわそう.`h -> 0` の極限では `Q -> q, P -> p` となる. ことさら言うまでもなく,`q, p` は数であって,それらは可換な量である. ところが,量子力学では,これらの量は非可換な「なにものか」に置き換えられてしまう. すなわち `Q, P` は次の交換関係に従う:

`[Q, P] = iℏ quad (ℏ = h /(2pi))`
(5.7)
ここで `[A, B] = AB - BA` は交換子をあらわしている.(後略)

この後説明が続き、何度もこの (5.7) 式が引用される。この非可換な式から無限が生まれる、 という解説には驚いた。ここから無限次元が出てくるのか、もっと勉強しなくては、 という思いを抱いた。

第6章 証明とは何か

難波莞爾氏の執筆になる本章は、証明と論理の概念を合わせて論じている。 この「現代数学への入門」では数学基礎論に関する分冊がないので、 本章が書かれたのはその代わりであったのかもしれない。

p.136 から引用する:

集合とはものの集まりのことである. 集合と対象の間の基本的関係は,対象が集合に入っているか入っていないかである. 集合 `A` に対象 `a` が入っているとき,

`a in A` または `A ∋ a`
と記し,`a` は `A` に属する( `A` includes `a` )または, `a` は `A` の元である( `a` is an element of `A` )という. 記号 `in` は英語の be に相当するギリシャ語の `epsilon sigma tau iota` の頭文字イプシロン `epsilon` を記号化したものでペアノ(1858-1932)によるという.

記号 `in` の出自についてこの記述で初めて知った。ちなみにエスペラントで英語の be に相当するのは esti であるから、 これもギリシャ語に由来するのだろうか。

数式記述

このページの数式は MathJax で記述している。

誤植

書誌情報

書 名現代数学の流れ2
著 者青本和彦・加藤和也・上野健爾・高橋陽一郎・神保道夫・難波莞爾
発行日1996 年 6 月 25 日
発行元岩波書店
定 価2分冊合計定価 3495 円(本体)
サイズA5版 184ページ
ISBN
その他越谷市立図書館にて借りて読む

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MARUYAMA Satosi