「まえがき」より
本書「幾何入門 1, 2」では,高校の教育課程で学ぶレベルの初等幾何から説き起こし,
幾何学の思想を紹介しながら,大学の 2,3 年までに習得する現代幾何学を目標にして話を進める.
幾何入門 2 も読みたかったが、私が利用する越谷市立図書館には所蔵がなかったので読めなかった。
その後、本書(幾何入門 1) と幾何入門 2 の合本である「幾何入門」が別の図書館にあったので、そちらを読むことができた。
この岩波講座は「現代数学への入門」である。だから、幾何入門といっても、
チェバの定理やらメネラウスの定理やらが出てくるわけではない。
第1章の「古典幾何学」では、ユークリッドの公理系そのものを考察していて、
たとえば、平行線の公理の位置づけについて、平行線の公理が他の公理から「証明」できた、
といわれる例をいくつかあげ、その「証明」に誤りがあることを調べるようなことをしている。
だからこの第1章を読むだけでも大変である。
第2章の「幾何学の公理系」で展開されているのは、ユークリッドの公理系ではなく、
ヒルベルトの公理系を若干変更したもの
(p.56)である。ここも大変である。
第3章は一転して「集合,写像,関係」である。なぜここでこれらの概念の説明が出てくるかということについては、
本書を読むしかない。
p.vi 「まえがき」から引用する。
なお,本文中の「問」には比較的簡単な証明問題を掲げた. 解答はつけていないが,やや難しいものにはヒントをつけてあるので, 自力で解いてほしい.
ほんとうだろうか。いくつか見てみよう。
pp.12-13 から引用する。
問2 2つの3角形において,2辺が等しく,それらの夾角ではない1組の対応する角が等しくても, 合同とは限らないことを,例をあげて説明せよ.
図がうまく書けない。
p.100 から引用する。
問4 物理学者の故朝永振一郎氏は,次のような問題を提出した(『鏡のなかの世界』みすず書房). 鏡に自分を写すと,鏡の中の自分の左・右は逆にもかかわらず,上下はそのままである.なぜか.
この問題は,M.ガードナー(『自然界における左と右』紀伊國屋書店)も提出している.
うーむ、わからない。「比較的簡単な問題」とはとても思えない。
一般的に「ベルンシュタインの定理」と呼ばれている命題は、本書 p.122 の定理 3.16 で「カントル-シュレーダー-ベルンシュタインの定理」として示されている。
このページの数式は MathJax で記述している。
p.110 から引用する:
ここでは最後の公式 `A nn (A uu B) = A` を証明しておこう.
`A nn (A uu B) sub A, quad A sub A nn (A uu B)`を示せばよい.`A nn (A uu B)` の任意の元 `x` に対して, `x` は `A` かつ `A nn B` に属するから特に `A` に属する.よって `A nn (A uu B) sub A` が成り立つ. 逆に `A` の任意の元 `x` は `A uu B` の元でもあるから,`x` は `A nn (A uu B)` に属する. よって `A sub A nn (A uu B)`.
ここで`x` は `A` かつ `A nn B` に属するから特に `A` に属する.
とあるが、正しくは《`x` は `A` かつ `A uu B` に属するから特に `A` に属する.》だろう。
なお、この誤植は、合本になった「幾何入門」では訂正済である。
書名 | 幾何入門1 |
著者 | 砂田 利一 |
発行日 | 1996 年 2 月 25 日 |
発行元 | 岩波書店 |
定価 | 2分冊合計定価 3495 円(本体) |
サイズ | A5版 154 ページ |
ISBN | |
その他 | 越谷市立図書館にて借りて読む |