本書は、1996 年に岩波講座『』の分冊「幾何入門 1, 2」として刊行されたものである。本書の前半は「幾何入門 1」である。 リンク先を参照してほしい。本書の後半は「幾何入門 2」であり、第 4 章「自然数から実数へ」、第 5 章「数と幾何学」、第 6 章「座標とベクトル」、第 7 章「公理系とモデル」からなる。
本書の後半について感想を記す。
まず、第 4 章『自然数から実数へ』の p.170 から引用する。有理数の集合 `QQ` の切断および正規の切断を前のページで定義していることを受けて、次の定義とその説明がある。
定義 4.39 実数(real number)とは `QQ` の切断のことである.実数全体を `RR` で表す.また,正規でない切断を無理数(irrational number)という.▯
このように,「実数」の名前に反して,それは素朴な形で存在するものではない.人間の精神の中に「形式」として住むものなのである.
私が学生のとき受けた解析の授業で、実数論を学んだかどうか、すっかり忘れた。デデキントの切断、という武骨な単語を聞いたことがある覚えがかすかにあるので、 わからないなりに受けたのだと思う。今、こうやって触れてみて、なんか、かっこいいと思う。ただ、このような説明が「幾何」の入門でやることなのかどうか、考えてしまう。
第 5 章 数と幾何学 では、代数の用語が出てきている。これには驚いたが、数学はいろいろな分野で関連しあっているので、驚くものではないのだろう。 p.234 では、弧の長さが定義されている。ここでは次のように説明されている。$ L(\stackrel{\frown}{AB}) $ は弧 $ \stackrel{\frown}{AB} $ の長さである。
弧の長さを定義したのはいいが,まず問題になるのは $ L(\stackrel{\frown}{AB}) $ の値が有限かどうかである.読者はこれを当たり前のことと思っているかもしれないが, 実は自明なことではない(平行線の公理を満足する平面では比較的容易だが,一般の場合は証明に技巧を要する).
私は自明だとは決して思っていない。フラクタル曲線のようになっているかもしれないからだ。
第6章 座標とベクトルは、高校でなじみがあるだろう。ただ、演習問題はなかなか骨がある。
第7章では、平行線の公理が独立であることを、非ユークリッド幾何学のモデルを実際に立てて示す節などが設けられている。
このページの数式は MathJax で記述している。
書名 | 幾何入門 |
著者 | 砂田 利一 |
発行日 | 2004 年 11 月 05 日 第 1 刷 |
発行元 | 岩波書店 |
定価 | 3900 円(本体) |
サイズ | A5版 370 ページ |
ISBN | 4-00-006880-6 |
その他 | 川口市立図書館にて借りて読む |