彌永昌吉・彌永健一:集合と位相Ⅰ

作成日:2021-10-23
最終更新日:

概要

本分冊では集合論について述べる。 本分冊の続きは集合と位相Ⅱである。

本書は「岩波講座 基礎数学」全 24 巻( 79 分冊) のうちの第 6 回配本のうちの 1 冊である。

感想

私は頭が弱いから理解できない。本文にはびっくり記号(エクスクラメーションマーク、!)が多く使われているのが面白い、 と思うぐらいだ。たとえば、p.18 では、 実は以下に述べるように,空集合から自然数,整数,有理数,実数等々が‘生み出される’! とか、 しかし,いま,われわれは 1, 2, 3 または `n` などという概念については, ‘知らない’ものとして議論を進めているのである! などというように出てくる。同じページでもう少し引用しよう。

`{a, a}` を `a` のシングルトン(singleton)と呼び,`{a}` と書く. 空集合 ∅ のシングルトン {∅} は,もはや空集合ではない! {∅} は ∅ という集合を元として含むからである. こうして,公理 S3) によって,空集合とは異なる集合 {∅} が存在することが示される!

こうやってびっくり記号が出てくると、やはり驚くべきことなのだと思う。

私にとっての驚きは、この数学で「シングルトン」ということばが出てきたことだった。 「シングルトン」とは、コンピュータ科学で、もっといえばデザインパターンで出てきたことばで、 あるプログラムの中で複数の存在を許さない、単一であることが保証されたオブジェクトをシングルトンというのだった。 私は集合の本を見るたびに、集合には、複数の同じ要素は許されないということがなぜ書かれていないか、 疑問に思っていた。コンピュータ科学では同じ元の複数所持を許さない構造を集合(set)、 複数所持を許す構造をバッグ(bag)といって区別する。ただ、この本を見て、書いてあるところには書いてあるのだと思った。 ついでにいうと、集合では元の列挙順序は問題にしないが、コンピュータで集合を表わすときに配列構造を用いると、 自然と列挙順序が入る。ついでに、pp.18-19 からの記述を見ると、 乱暴な言い方をすれば,`{a, b, c}` は,集合 `{a, b}` と `{c}` の非順序対 `{{a, b,},{c}}` の‘内部的な壁を取り除く’ことによって得られる. という記載がある。これは、Haskell などの関数 flatten() のことのようだ。

p.39 に添数(index)や添数に関する説明がある。添数の読み方は一瞬まごつく。「てんすう」と読むのが正しいようだ。 また、index は添字ともいうが、こちらは「そえじ」である。えるは訓読み、 は音読みだから、「そえじ」は湯桶読みである。

そうこうするうちにドイツ文字 `frA` や `frS` が出てきて、もう私にはわからない。

一般に「選択公理」と言われているものは本書では「選出公理」といっている。

一つぐらいは問題を解かないといけないだろう。p.68 にある問題 3.12 である。なお、本書で Z と記述している整数の集合を引用にあたり `ZZ` に変更した:

問題 3.12 `ZZ//3ZZ` は体になること,`ZZ//4ZZ` は整域にはならないことを確かめよ.

`ZZ//3ZZ` の演算表は次の通りである:

+012
0012
1120
2201
×012
0000
1012
2021

よって体をなす。

`ZZ//4ZZ` の乗法の演算表は次の通りである:

×0123
00000
10123
20202
30321

p.64 では零環とは異なる単位的可換環は,零因子を含まないとき整域 (integral domain)と呼ばれる.とある。零環は零元のみからなる環(p.63) である。 零因子はなんぞやということだが、p.64 では、 環 `R` の 0 とは異なる元 `x` に対して `R` の 0 とは異なる元 `y` で `xy=0` または `yx=0` となるようなものがあるとき,`x` を `R` の零因子(zero divisor)と呼ぶ.

`ZZ//4ZZ` では `2 xx 2 = 0` なので 2 が零因子である。したがって、`ZZ//4ZZ` は整域ではない。

数式記述

このページの数式は MathJax で記述している。

書誌情報

書 名集合と位相Ⅰ
著 者彌永昌吉・彌永健一
発行日1976 年 11 月 2 日 第1刷
発行元岩波書店
定 価
サイズA5版 128 ページ
ISBN
その他岩波講座 基礎数学 草加市立図書館にて借りて読む

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MARUYAMA Satosi