茅 幸二, 中嶋 敦:化学の考え方

作成日:2021-09-17
最終更新日:

概要

岩波講座 現代科学への入門の第1巻である。まえがきの ix ページから引用する: (番号リストは原文ではカッコつき)

本書では,化学の考え方の基礎として次の 4 つの考え方が大切であることを中心に述べていく.

  1. 物質の階層性
  2. ミクロ世界における物質の粒子性と波動性(二重性)
  3. 多数の構成単位による「分布」のもとに物質が存在すること.
  4. 構成単位の「分布」がゆらぐ中で,固体・液体・気体間の平衡や化学反応が起こること.

感想

本書は化学というより、物理の観点で書かれているように感じた。 だから、私は物理の入門書として読んだ。ただ、化学の書籍だからか、 具体例として、水素原子、リチウム原子、ポリエンなどが取り上げられているのは面白い。

p.83 では、イオン結合による凝集について述べられている。そこでは、 1次元的に並べられた塩化ナトリウム NaCl について、 特定の Na 原子が受ける静電エネルギーを計算している。pp.83-84 から引用する:

Na 原子と Cl 原子との距離を `R` として,注目している Na 原子が受ける静電エネルギー `E_(CE)` を計算すると,すぐ隣が引力,次が斥力,そのまた隣が引力,…などとなっていることから, 次式のようになる.

`E_("CE")`
`= 2(-e^2)/(4pi epsilon_0 R) (1/R - 1/(2R) + 1/(3R) - 1/(4R) + cdots)`
`= (-e^2)/(4pi epsilon_0 R) A `
ここで,
`A = 2(1 - 1/2 + 1/3 - 1/4 + cdots)`
とおいた.いま,対数関数の展開公式(マクローリン展開)
`ln(1+x) = x - x^2/2 + x^3/3 - x^4/4+ cdots`
を用いると,`x = 1` とおくことにより,`A = 2 ln 2 (=1.386) ` となるので,結局
`E_("CE") = (-e^2)/(4pi epsilon_0 R) 2 ln 2`
となる.

たまたま同じ時期に図書館で借りていた「数学の力」に、この対数関数の展開公式から得られた無限級数の和が、 メルカトル級数として記述されていたので、うれしくなった。

数式記述

このページの数式は MathJax で記述している。

誤植

書誌情報

書 名化学の考え方
著 者茅 幸二, 中嶋 敦
発行日2008 年 1 月 30 日
発行元岩波書店
定 価3500 円(本体)
サイズA5版 190 ページ
ISBN978-4-00-011031-0
その他岩波講座 現代化学への入門1 草加市立図書館にて借りて読む

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