Petit Dru (3733m)




「良ちゃん、ドリュ行こうや。」

「ドリュ付き合ってくれるなら、ジョラス付き合ってもええでぇ〜。」

京都のどこかの飯屋で、イソさんに、誘われたのが始まりだった。
89年はじめての海外登山。

プラスティックブーツ、アイゼン、アックス、・・・。
すべての装備を担いでの登攀は、苦しいものであれ、
楽しいものとは、ほど遠かった。
45mのデルファーを終えた時点で、敗退を覚悟した。
何より、準備不足、トレーニング不足だった。


名張や小川山あたりの5.10くらいのクラックを少し登って
94年、2度目の来仏。
今度は、3人でアメリカンダイレクトへ。
1日天気待ちをしたものの、くさび止までは、いけると思った。
遠くなり響く雷鳴・・・。
雷の怖さは、1度目のアルプスで痛感していた。


不安定な天気の中、みな、旅行モードになっていった。
あきらめきれずに、ソロで向かったボナティ稜。
大渋滞に巻き込まれ、のどの渇きと戦いながらの登攀。

疲れた体で、シュルダー(肩)から下降路でもある、
炎の岩稜にトラバースしながら、多くのことを考えていたように思う。

ドリュは、僕にとって、目標ではなかった。
通過点の1つのはずだった。

僕の目標であった、ジョラスやプトレイ山稜には、触れることもなく
何度となく、ドリュに向かい、そして頂上にたつことはなかった。

マリア様は、遠かった。

それでも、ひとつ言えることは、どれもが思い出深い山行であったということ。

2006.1.10 記